中国初、探査車「祝融」が火星に着陸成功
sorae.jp / 2021年5月18日 17時57分
中国国家航天局(CNSA)は5月15日、火星探査機「天問1号」から切り離された着陸機が火星の地表へ着陸することに成功したと発表しました。火星への着陸成功は中国にとって初めてのことで、世界的にも旧ソ連、アメリカに次ぐ3か国目となります。
天問1号は周回機(オービター)、着陸機(ランダー)、探査車(ローバー)から構成される探査機です。このうち探査車は中国の古代神話における火の神にちなんで「祝融(しゅくゆう)」と命名されています。2020年7月23日に海南島の文昌衛星発射センターから打ち上げられた天問1号は、2021年2月10日に火星の周回軌道へ入ることに成功していました。
関連
・中国、火星探査機「天問1号」の打ち上げ実施 2021年に火星に到着
・UAE「HOPE」と中国「天問1号」が火星周回軌道への投入に成功
CNSAによると、天問1号は日本時間15日2時頃にエンジンを点火して火星に接近する軌道へと入り、5時頃に着陸機を分離した後に元の軌道へと戻りました。探査車「祝融」を載せた着陸機は火星への降下を続け、分離から3時間後に大気圏へ突入。日本時間2021年5月15日8時18分にユートピア平原の北緯25.1度、東経109.9度の地点に着陸しました。新華社通信によると、着陸機を降りる前の祝融は、7~8日かけて周辺環境の確認と自己診断を行うとされています。
地球との通信にはタイムラグが生じることから、3か月前に着陸したアメリカ航空宇宙局(NASA)の火星探査車「Perseverance(パーセベランス、パーサヴィアランス)」と同様に、着陸機は自律的な判断で降下する必要がありました。パラシュートによる減速の後に高度1500メートルでロケットエンジンを点火した着陸機は、高度100メートル付近で一旦ホバリングを行い、障害物がないことを確認した上で着陸地点に降り立ったということです。
祝融は高さ1.85メートル、重量250キログラムで、6つの車輪と4枚の太陽電池パネルを備えており、火星の地表を時速200メートルで移動可能とされています。祝融にはナビゲーション用の2台のカメラをはじめ、マルチスペクトルカメラ、気象センサー、地中レーダー、磁力計、レーザーを用いた表面組成の検出器といった観測装置が搭載されています。
火星の北半球に広がるユートピア平原は、数十億年前の天体衝突によって形成された衝突盆地と考えられています。CNSAでは探査機の着陸地点にユートピア平原を選んだ理由として、地形や天候が着陸に適していることと、かつて海の一部だった可能性が高いことに言及。祝融はここで少なくとも3か月間の探査を行う予定です。
なお、CNSAによると、天問1号のチーフデザイナーを務める張栄橋氏は15日、火星で採取したサンプルを持ち帰るサンプルリターンミッションの計画立案を中国が開始したと発言しています。火星からのサンプルリターンミッションはNASAと欧州宇宙機関(ESA)も共同で進めており、Perseveranceが採取・保管したサンプルを回収し、地球に運ぶことが計画されています。
地球では火星に由来する隕石も幾つか見つかっていて、研究に役立てられていますが、探査機によって火星で採取されたサンプルが地球に持ち帰られたことはまだありません。今後の火星探査では、米欧と中国によるサンプルリターンミッションが一つの焦点になりそうです。
関連
・火星探査車「Perseverance」について知っておきたい7つのこと
・ESA計画の火星探査ミッションを動画で紹介。NASAと連携したサンプルリターンも
Image Credit: CNSA
Source: CNSA / 新華社
文/松村武宏
この記事に関連するニュース
-
火星での「サバイバル」は可能? 仏研究グループが「宇宙農業」の可能性を探る火星ローバーを提案
sorae.jp / 2024年5月2日 20時45分
-
月周回有人拠点「ゲートウェイ」居住モジュールの製造が進行中 打ち上げは2025年以降
sorae.jp / 2024年4月19日 11時8分
-
2021年にISSから投棄された人工物の一部が大気圏再突入後に米国の民家へ落下
sorae.jp / 2024年4月18日 21時21分
-
日本人宇宙飛行士に2回の月面着陸機会 「アルテミス計画」与圧ローバー巡り日米間で署名
sorae.jp / 2024年4月15日 11時4分
-
火星での生命探査にパラダイムシフトを起こすか 米大学院生が提案する斬新なミッション
sorae.jp / 2024年4月12日 9時22分
ランキング
-
1トイレ掃除を頼むと涙目…新人バイトはオーナー親族のお嬢様。いきなり辞めたが、意外な展開に
女子SPA! / 2024年5月2日 8時47分
-
2「おじさんドラマ」すっかり定着の底知れぬ魅力 ベテラン俳優が好演、世間の"おじさん観"も変化?
東洋経済オンライン / 2024年5月2日 13時20分
-
3「いきなり退職代行から連絡が…」「注意すると泣く」20代社員はなぜ“打たれ弱い”のか
日刊SPA! / 2024年5月2日 8時52分
-
4年収4000万円超えの弁護士、44歳でスタートさせた婚活の「残念すぎる結末」
日刊SPA! / 2024年5月2日 9時39分
-
5「紅麹問題」"3つの基本、混同してる"人が多すぎだ "添加物のプロ"が明かす「問題の本質」は?
東洋経済オンライン / 2024年5月2日 13時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください