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2021年に注目された「宇宙天文ニュース」~後半:天文編~

sorae.jp / 2021年12月31日 19時0分

今年も宇宙開発や天文学に関する注目のニュースが相次ぎました。2021年にsoraeがお伝えしたニュースのなかから注目すべきニュースをピックアップしてご紹介。今回は後半の「天文ニュース編」です!

※本記事は2021年12月28日時点での情報をもとにしています

>前半の宇宙開発ニュース編はこちらです。

■太陽系外惑星の世界 太陽系外惑星「GJ 367b」(左)を描いた想像図(Credit: SPP 1992 (Patricia Klein))

【▲太陽系外惑星「GJ 367b」(左)を描いた想像図(Credit: SPP 1992 (Patricia Klein))】

人類はこれまでに4800個以上の太陽系外惑星を発見しています。2021年はこれら系外惑星に関する研究成果の発表が相次ぎました。

系外惑星のなかには太陽系の惑星とはかけ離れた環境を持つものがあります。「超短周期(UPS:ultra-short period)惑星」と呼ばれるタイプの系外惑星は、公転周期……つまりその惑星にとっての「1年」が地球の1日よりも短いことを特徴としています。

今年は国立天文台ハワイ観測所の「すばる望遠鏡」が観測した「TOI-1634 b」や「TOI-1685 b」をはじめ、幾つかの超短周期惑星に関する研究成果が発表されています。なかでも「ヘルクレス座」の方向およそ855光年先の「TOI-2109b」は昼側の表面温度は摂氏およそ3330度(約3600ケルビン)と推定されており、観測史上2番目(発表時点)に昼側の推定温度が高い系外惑星とされています。

また、七夕の「織姫」としておなじみの星である「こと座」の一等星「ベガ」を系外惑星が公転している可能性を示した研究成果も今年発表されました。もしも惑星が存在する場合、超短周期惑星に比べれば長いものの、その公転周期は約2.43日と推定されています。ベガは太陽よりも大きくて高温の恒星(A型星)であるため、惑星の表面温度は超短周期惑星のTOI-2109bに匹敵する摂氏3000度程度ではないかとも予想されており、将来の観測による確認が期待されています。

関連
・「1年」が地球の1日よりも短いスーパーアースを観測、すばる望遠鏡などの観測成果
・「1年」がわずか16時間、観測史上2番目に熱い太陽系外惑星が見つかる
・31光年先に最軽量級の超短周期惑星が見つかる。公転周期は約8時間
・こと座の「ベガ」を公転する灼熱の系外惑星が存在するかも

「超大型望遠鏡(VLT)」の観測装置「SPHERE」を使って撮像されたケンタウルス座b星(左上)周辺の様子。矢印で示された右下の天体は系外惑星「ケンタウルス座b星b」。ケンタウルス座b星からの光はコロナグラフに隠されている。右上に見えているのは背景の星(Credit: ESO/Janson et al.)

【▲「超大型望遠鏡(VLT)」の観測装置「SPHERE」を使って撮像されたケンタウルス座b星(左上)周辺の様子。矢印で示された右下の天体は系外惑星「ケンタウルス座b星b」。ケンタウルス座b星からの光はコロナグラフに隠されている。右上に見えているのは背景の星(Credit: ESO/Janson et al.)】

系外惑星の多くは主星(恒星など)の光を観測することで間接的にその存在が検出されていますが、系外惑星が反射した主星の光を直接捉えることができる場合もあります。今年はチリのパラナル天文台にあるヨーロッパ南天天文台(ESO)の「超大型望遠鏡(VLT)」によって直接撮像された系外惑星の画像も公開されました。このような画像が公開されたのは今年が初めてというわけではありませんが、これらの系外惑星は研究者に新たな事実や謎をもたらしており、今後のさらなる観測と分析が待たれます。

関連
・直接撮像された325光年先の太陽系外惑星、ヨーロッパ南天天文台が画像公開
・360光年先の系外惑星を直接撮影。木星よりも6倍重いガス惑星が投げかける謎

 X線連星「M51-ULS-1」を公転する系外惑星の想像図。ブラックホールもしくは中性子星(中央)には大質量星(右)から落下したガスによって降着円盤が形成されており、その手前を系外惑星が横切る様子が描かれている。画像では連星のすぐ近くを系外惑星が公転しているように見えるが、実在すれば太陽から土星までの距離の2倍程度(約20天文単位)離れているとされる(Credit: NASA/CXC/M. Weiss)

▲ X線連星「M51-ULS-1」を公転する系外惑星の想像図。ブラックホールもしくは中性子星(中央)には大質量星(右)から落下したガスによって降着円盤が形成されており、その手前を系外惑星が横切る様子が描かれている。画像では連星のすぐ近くを系外惑星が公転しているように見えるが、実在すれば太陽から土星までの距離の2倍程度(約20天文単位)離れているとされる(Credit: NASA/CXC/M. Weiss)】

いっぽう、私たちが住む天の川銀河から遠く離れた別の銀河で系外惑星を検出したとする研究成果も発表されています。その銀河は「りょうけん座」の方向およそ3000万光年先にある渦巻銀河「M51」で、近くにある銀河「NGC 5195」とあわせた「子持ち銀河」の呼び名でも知られています。

今年報告された系外惑星候補「M51-ULS-1」は、ブラックホールもしくは中性子星と大質量星からなる「X線連星」から届いたX線の観測を通して検出されました。研究を行ったグループによると、系外惑星とみられる天体がX線の放射を3時間に渡り遮る様子が観測されたといいます。

仮に惑星が存在していた場合、その公転周期は約70年と推定されており、同様の現象が再観測されるとしても70年後のことになると予想されています。近いうちにM51-ULS-1の存在を確認することはできなさそうですが、同様の観測手法を用いて新たな系外惑星候補が見つかることに研究グループは期待しています。

関連:3000万光年先の銀河「M51」に存在するかもしれない太陽系外惑星の候補が報告される

■地球の「水の起源」に迫る研究成果 小惑星探査機「はやぶさ2」の再突入カプセルから回収されたサンプルの一例(Credit: JAXA)

【▲小惑星探査機「はやぶさ2」の再突入カプセルから回収されたサンプルの一例(Credit: JAXA)】

1年前の2020年12月、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」が地球へ帰還し、小惑星「リュウグウ」(162173 Ryugu)から採取されたサンプルが「はやぶさ2」の再突入カプセルを使って地球へ届けられました。

今年は再突入カプセルから回収されたサンプルの詳細な分析に先立つキュレーション(サンプルのカタログ化と後の科学分析に役立つ情報提供を目的とした作業)が始まっており、その過程で判明したサンプルの化学組成などが12月に発表されています。発表によると、採取されたサンプルはリュウグウが含水鉱物や有機物に富む始原的な小惑星であることを示しており、高温の環境下で生成される包有物(コンドリュールやCAI)は見当たらなかったとされています。

C型小惑星は彗星とともに初期の地球へ水をもたらした天体ではないかと考えられています。今後のリュウグウ試料の詳しい分析や、アメリカ航空宇宙局(NASA)の小惑星探査機「OSIRIS-REx(オシリス・レックス)」が採取して2023年9月に地球へ持ち帰られる予定の小惑星「ベンヌ」(101955 Bennu)のサンプルとの比較などを通して、地球の水や有機物の起源についての新たな知見が得られることが期待されます。

関連
・「はやぶさ2」採取のサンプルから判明、小惑星「リュウグウ」は水・有機物に富み始原的
・NASA小惑星探査機「オシリス・レックス」がベンヌを出発、地球への帰路に

また、2010年6月に地球へ帰還したJAXAの小惑星探査機「はやぶさ」がごく微量ながらも持ち帰ることに成功した小惑星「イトカワ」(25143 Itokawa)のサンプルの分析を通して、地球の水の一部が太陽風によって生成された可能性を示す研究成果が11月に発表されています。太陽風がシンプルな過程で水分子を形成する可能性は別の研究グループからも3月に発表されていました。

関連
・地球の水の一部は太陽風によって生成された可能性、初代「はやぶさ」が持ち帰ったサンプルの分析結果から
・月面で検出された水分子は従来の予想よりもシンプルな反応で生成されている可能性

■おそるべき天体衝突に備える

【▲ツングースカ大爆発で発生したエアバーストの範囲を死海周辺の地図に重ねた図。ツングースカ規模のエアバーストがヨルダン渓谷南部から死海までの広範囲を覆った可能性が示されている(Credit: Nature, T. Bunch et al.)】

今からおよそ3600年前の古代中東で天体衝突にともなうエアバースト(強力な爆風)が発生し、都市国家が破壊されていたかもしれない。そんな可能性を示す研究成果が9月に発表されて話題になりました。

研究を行ったグループによると、その衝突の規模は1908年6月にシベリアで発生した「ツングースカ大爆発」を上回っていた可能性もあるといいます。衝突は都市の直接的な破壊にとどまらず、死海の沿岸から巻き上がった塩の結晶が付近に撒き散らされたことで深刻な塩害が発生し、この地域の農業に数世紀続くダメージを与えた可能性さえあるとされています。

関連:古代中東の都市が「ツングースカ大爆発」のような天体衝突で破壊されていた可能性が高まる

まるでフィクションのような話ですが、天体衝突は現実の脅威です。9年近く前の2013年2月にロシアのチェリャビンスク州上空で発生した天体衝突のエアバーストでは1000名以上が負傷し、建物の被害も生じました。チェリャビンスクに落下した天体のサイズは直径10mクラスとみられていますが、それでも多くの人々が危険に晒されることが示されたのです。

深刻な被害をもたらす天体衝突を事前に予測し、将来的には小惑星などの軌道を変えて災害を未然に防ぐための取り組みは「惑星防衛(プラネタリーディフェンス)」と呼ばれています。惑星防衛でまず重要なのは、地球に衝突するかもしれない天体の捜索と追跡です。地球に接近する軌道を描く小惑星は「地球接近天体」(NEO:Near Earth Object)と呼ばれており、そのなかでも特に衝突の危険性が高いものは「潜在的に危険な小惑星」(PHA:Potentially Hazardous Asteroid)に分類されていて、将来の衝突リスクを評価するために追跡観測が行われています。

もしも小惑星が地球に衝突する確率が高いと判断されたとしても、事前に衝突体(インパクター)をぶつけて小惑星の軌道を変えることで、甚大な被害をもたらす衝突を回避できるかもしれません。このような手法は「キネティックインパクト」(kinetic impact)と呼ばれており、実用化に向けた技術実証ミッションが今年始まりました。

11月24日に探査機が打ち上げられたNASAの「DART」(DARTはDouble Asteroid Redirection Test(二重小惑星方向転換試験)の略)は、小惑星「ディディモス」(65803 Didymos、直径780m)の衛星「ディモルフォス」(Dimorphos、直径160m)に探査機を衝突させることで、キネティックインパクトの効果を検証する初めてのミッションです。DART探査機は2022年9月下旬~10月初旬のどこかのタイミングでディモルフォスに衝突する予定で、ディモルフォスの軌道には地球からの観測でも検出できる変化が生じると予想されています。

【▲DARTのミッションを解説したイラスト。探査機(Spacecraft)が衝突することで、ディディモス(Didymos)を周回するディモルフォス(Dimorphos)の軌道が変化する(白→青)と予想されている(Credit:NASA/Johns Hopkins APL/Steve Gribben)】

また、DARTが衝突した後のディモルフォスは、2024年に打ち上げが予定されている欧州宇宙機関(ESA)の探査機「Hera(ヘラ)」によって詳細に観測される予定です。DARTによるキネティックインパクトの実践とHeraによるその結果の調査は、小惑星の軌道変更技術の確立につながると期待されています。

関連
・NASA、小惑星に衝突させて軌道を変える探査機「DART」の打ち上げに成功 ミッションは来年9月頃
・NASA探査機衝突後の小惑星を観測するESAのミッション「Hera」

■今年は国内で2回の月食を観測

【▲ 石垣島天文台で撮影された2021年5月26日の皆既月食(Credit: 国立天文台/堀内貴史)】

最後に、今年の日食や月食を振り返ってみましょう。2021年は世界で日食と月食がそれぞれ2回観測されましたが、日本では5月26日の皆既月食と11月19日の部分月食を観測することができました。

5月の皆既月食は満月の見かけの大きさが一年で最も大きくなる、いわゆる「スーパームーン」のタイミングで起きた「スーパームーン皆既月食」として注目を集めました。また、11月の皆既月食は月の視直径のうち97.8パーセントが地球の影に入り込む「ほぼ皆既」な部分月食でした。

【▲国立天文台三鷹キャンパスで撮影された2021年11月19日の「ほぼ皆既」な部分月食(Credit: 国立天文台)】

国立天文台によると、2022年の国内では日食は観測できず、月食は11月8日に皆既月食が観測できるようです。天候次第ですが、2022年に日本で観測できる唯一の月食、楽しみに待ちたいと思います。

関連
・赤銅色に輝く月。画像で振り返る2021年5月の皆既月食
・11月19日は「ほぼ皆既」な部分月食! 18時頃に東の空を見てみよう
・国立天文台から「2022年の暦要項(れきようこう)」が発表される

 

■この記事は、Apple Podcast科学カテゴリー1位達成の「佐々木亮の宇宙ばなし」で音声解説を視聴することができます(※ 1月1〜4日に配信予定です)

文/松村武宏

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