超新星爆発で放り出された星「へびつかい座ゼータ星」が生み出す衝撃波
sorae.jp / 2022年7月28日 21時2分
こちらは、地球から約440光年離れた恒星「へびつかい座ゼータ星(Zeta Ophiuchi)」とその周辺の様子です。人間には見えない赤外線とX線の波長で取得された画像が使われていて、色は波長に応じて擬似的に着色されています(赤外線:赤・緑・青、X線:濃い青)。元になった画像はアメリカ航空宇宙局(NASA)が運用していた赤外線宇宙望遠鏡「スピッツァー」(2020年1月運用終了)と、運用中のX線観測衛星「チャンドラ」を使って取得されました。
画像中央で明るく輝くへびつかい座ゼータ星は、太陽の約20倍の質量がある重い星。その左隣でアーチ状に伸びた赤と緑の繊細な構造は、へびつかい座ゼータ星の恒星風と星間物質が衝突することで生じた弧状衝撃波です。航行する船の前方に立つ波のようであることから「バウショック」(bow shock)と呼ばれています。
スミソニアン天体物理観測所のチャンドラX線センターによると、へびつかい座ゼータ星はかつて別の星と連星をなしていたものの、その星が超新星爆発を起こした時に放り出されたと考えられています。現在、へびつかい座ゼータ星は秒速約38km(局所静止基準に対する速度、Green et al. 2022)で移動していると推定されており、弧状衝撃波はへびつかい座ゼータ星の移動方向に生じています。
ダブリン高等研究所のSamuel Greenさんを筆頭とする研究チームは、この弧状衝撃波の詳細なコンピューターモデルを構築して、X線・可視光線・赤外線・電波といった様々な波長で実際に取得されたデータを説明できるか確かめました。チャンドラX線センターによれば、チャンドラは衝撃波の影響で数千万度に加熱されたガスから放射されたX線を捉えています。研究チームが構築した3種類のコンピューターモデルのうち2つは、X線放射が衝撃波に近いほど強くなることを示していたといいますが、実際に検出されたX線は星の近くで最も強かったようです。
研究チームは今後、より複雑なモデルを使ってX線のデータを説明できるか確かめる計画を立てているとのことです。冒頭の画像はチャンドラX線センターから2022年7月25日付で公開されています。
関連:NASAの観測衛星「チャンドラ」が天王星から放射されたX線を初めて検出
Source
Image Credit: X-ray: NASA/CXC/Dublin Inst. Advanced Studies/S. Green et al.; Infrared: NASA/JPL/Spitzer チャンドラX線センター - Zeta Ophiuchi: Embracing a Rejected Star Green et al. - Thermal emission from bow shocks II: 3D magnetohydrodynamic models of Zeta Ophiuchi文/松村武宏
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