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“格ゲーの技”を完コピできる女性が持つ、意外な弱点「日体大卒なのに...」

日刊SPA! / 2024年4月5日 8時51分

 だが中国武術によって毎日に活力が宿っても、イナミ氏の生来の「話し下手」が改善されたわけではない。学生時代のコミュニケーションにまつわるエピソードはなかなか濃い。

「友人はいましたが、いつも『私といてもつまらないだろうに、何で居てくれるんだろう?』と思っていました。会話は一問一答みたいになって続かず、食堂で一緒にご飯を食べていても無言……みたいな(笑)。授業中もやたら眠くて、気がついたら休み時間もぶち抜いて寝てしまっていて」

◆実は「運動神経が悪い」

 画角いっぱいを縦横無尽に動く今のイナミ氏からは想像がつかないが、「いわゆる陰キャだったんです」という自己申告も頷ける。くわえて、衝撃の告白もある。

「陰キャだけならまだいいんですけど、私、運動神経が悪いんですよ。体育もどちらかといえば苦手でして……」

 日本体育大学体育学部を卒業した彼女が、運動が苦手とはどういうことか。

「そもそも小学生くらいのときは身体も虚弱で、風邪をひいては学校をよく休んでいました。大学に入ってからも運動が苦手で、必修の体育で再履修になったこともあります。走るのは遅いですし、球技はめちゃくちゃ苦手です。

 ただ、東洋哲学などを学ぶことで心身の関係性を知って人間の理解が深まりました。それから、もともとの運動能力がなくても、中国武術によって基礎的な体力を上昇させることができました。それでも、現在もまだ筋力は弱いし、動画撮影の前のウォーミングアップで『疲れた』と泣き言をいうこともしばしばですが(笑)」

◆顔出しで発信するのを決めた理由

 もともと人前に出ることが苦手で、スポーツ万能ですらない女性が、自らが修めた中国武術を駆使して配信すること。その目的は、こんなところにある。

「多くの人がゲームや漫画のキャラクターの繰り出す技を生身の人間ができるはずがないと思っているでしょう。しかし、武術の基礎を学ぶことで再現可能なものも実は結構あるんです。私が開催する『格ゲーキックセミナー』というイベントでは中国武術の基礎を体験してもらい、誰でもゲームキャラのように動けるようになる面白さを味わえます。

 過去の私がそうだったように、自分に自信が持てなくて悩んでいる人は多いのではないかなと思っています。『こんな面白い動きが真似できるんだ』という体験をすれば、生きるのが少し楽しくなるんじゃないか。そう考えています。だから太極拳を広めるために太極拳の先生を目指しました。とはいっても、特定の地域に住む人たちのためだけの先生ではなくて、もっと広い世界に呼びかけたいんです。そのために、苦手だったSNSにも取り組み、顔を出して活動しようと決めたんです」

 ままならない日常を生きるとき、ゲームや漫画などのサブカルチャーが心の支えになることは少なくない。けれども、そこに身体性を持たせ、生きるのにより前向きなエッセンスを加えられたら、幸せをもう一歩手繰り寄せることができる。動画だけを見ればその美技にひたすら圧倒され、“神業”ともてはやしたくもなるが、イナミ氏の哲学はもっと深くて温かい場所に通じている。

<取材・文/黒島暁生>

【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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