「2027年の開業を断念」遅々として進まないリニア問題。静岡県知事だけではない「責任の所在」
日刊SPA! / 2024年4月23日 8時51分
ただ、リニアが素通りするだけだったら、県知事や県民も目くじらを立てることはありませんでした。問題は、リニア工事に伴って南アルプスから水が流出してしまうことです。
南アルプス山中から湧き出ている水は、静岡県中部を流れる大井川へと注いでいます。つまり、リニア工事によって大井川の水量に異変が生じてしまうことが懸念されたのです。
◆リニアに対して「前のめりな発言」をする時期も
大井川の水は、流域自治体にとって生活用水になっているだけではありません。農業用水・工業用水としても利水されており、大井川の水量に異変が生じることは、静岡経済にも大きな打撃を与えることは必至です。
県民の生命・財産を守ることは、静岡県知事の責務です。川勝知事が軽々にリニアの着工を認めないのは、ひとえに知事の職責を果たしているというわけです。
と言いたいところですが、川勝知事は2009年の就任当初からリニア建設に反対していたわけではありません。2013年には、JR東海の役員たちとともにシンポジウムに登壇。JR東海の役員よりもリニアに対して前のめりな発言をしていました。
JR東海よりもリニア開業に前のめりだった川勝知事ですが、次第に態度を硬化させていきます。それはJR東海がリニア工事における大井川の水対策に真摯な態度を見せなかったことが大きく起因しています。
◆2027年開業は正式に断念することに
いったん硬化した川勝知事の態度は、JR東海の提案をことごとく拒否することにつながり、静岡県とJR東海は没交渉になりました。そのため、静岡工区は着工のメドすら立たない状況に陥っているのです。
川勝知事の論理は時に理解不能でした。そのため、リニア推進派からは「ゴールポストを動かしている」と非難されていました。実際、リニアに対する大井川の水問題や環境保護を守るための発言は一貫していません。
JR東海は川勝知事から工事着工の認可を得られず、いたずらに時間だけが過ぎていきました。昨年にJR東海は2027年開業という目標を2027年“以降”開業と濁した表現に改めました。そして、このほど2027年の開業を断念することを発表したのです。すでに、昨年の段階で2027年開業は実質的に延期されていたわけですが、それをJR東海が正式に認めた格好です。
◆なぜ「静岡工区」にこだわるのか
なぜ、JR東海は静岡工区の工事にこだわるのでしょうか? 静岡県を通らないルートでリニアを建設するなら、静岡県から認可を得る必要はありません。
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