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大事に育てた若者が都会に”さらわれて”いく…。田舎の親が言いたくても言えないホンネ/猫山課長

日刊SPA! / 2024年5月10日 15時51分

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写真はイメージです

【日本の99%は山手線からは見えない 第10回】
地方の金融機関で課長を務めながら作家としても活動する猫山課長(46歳)。過疎化が進む現代の地方都市に根を張り、働き、家族を養い、生きる――。それがどういうことか。地方の中年サラリーマンが、「東京人は絶対に知らない、もうひとつのニホンの姿」を綴る。

◆自分の生まれ育った町には「何もない」

「もうここには帰ってこないと思う」

長女からの意思表示を聞いたのはこの間のお正月だったが、いまだにその言葉が忘れられない。

長女は2年前に18年間住んだ家を出て、兵庫県に進学して行った。私は中部地方に住んでいるので兵庫県は隣県ではなくそれなりに遠い土地であり、縁もゆかりもない場所だ。

アパートの下見や引越しなどで何度か行ってみたが、とても住みやすい街に感じた。大阪まで電車で数分、交通機関も充実している。近くに大型ショッピングセンターもある。正直、ここに住む長女が羨ましくなった。

2年も住んでいれば、自分の生まれ育った町がいかに不便で何もないかがクリアカットに見えてくるものだ。当たり前の話だが、長女は目が覚めたような感覚になったのだろう。それは自然なことだと思う。

長女が地元に帰ってこない。そのことに異議はない。私もそれを望んでいるからだ。しかし、忸怩たる思いは残る。

我々田舎モンは、毎年子どもを都会に”攫われている”のだ。

◆田舎は「職がない」わけではない

よく「田舎には職がない」と言われる。だが、それは間違っている。

私は金融機関に勤務し、人材系の業務も担当している。よって企業の人事担当者と面談することがよくあるが、ほぼ全員が「人がいない。特に若い人」とため息混じりで吐き出している。

過疎が進む田舎において若い労働力はまさに金の卵であり、もはや垂涎の的となっている。田舎には職がない、というのは完全に時代遅れだ。田舎には社員を求める企業ばかりが溢れている。

しかし、いくら職があるからといって若者が田舎に帰ってくるわけじゃない。もちろん都市部の企業と比較したら、年収や福利厚生の面で田舎の企業は劣っており、不利であるのは間違いないが、大学で学んだ知識や経験を活かすことができる企業が少ないほうが原因として大きいと感じる。

国立大学や有名私大を卒業した人物が、一社員としてその能力を発揮できる会社が多くあるかといえば、返答に困ってしまう。もちろん活躍できることに疑いはない。しかし、大企業に勤務した場合と比べて、より大きな価値を生み出すような活躍をし、さらに成長までできるかというと、もう勝負にならなくなってしまう。やりがいの格差はいかんともし難い。

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