月収の高さ 新入社員と逆転も?「初任給」30万円超えへ“本音”は【Nスタ解説】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2025年1月10日 22時38分
社会人になって初めてもらう給与、「初任給」。いま、ユニクロなどの大手企業で初任給30万円超えの動きが広がっています。一方で大卒現役世代の月収はどう変化していくのでしょうか。
ユニクロや大手銀行など「初任給」30万円超えに
南波雅俊キャスター:
新入社員の初任給について、大手企業などが引き上げる方針を発表しました。
▼ファーストリテイリング(2025年3月~)
新入社員の初任給:30万円から33万円に引き上げ。
1年目の年収は500万円強に。
▼三井住友銀行(2026年4月~)
大卒の初任給:25万5000円から30万円に引き上げ。
大手銀行で30万円台となるのは初。
大卒の初任給の推移を年代別で見ていきます。(厚労省・賃金構造基本統計調査より 全国平均)
【大卒 初任給の推移】
1996年:19万700円
2000年:19万3700円
2010年:19万7400円
2019年:21万200円
90年代から2010年までは20万円を下回っていました。ただ、2011年に初めて20万円を超えて、2014年以降はずっと20万円を超え、2019年には21万円台になっているということなんです。
また、1年目6月の給与平均も相当高くなっている印象です。
【1年目6月給与】
2020年:22万6000円
2021年:22万5400円
2022年:22万8500円
2023年:23万7300円
「初任給」の引き上げ 一体なぜ?
なぜ初任給が上がっているのか、みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介チーフ日本経済エコノミストは、「少子化で人材獲得競争が激化している。企業は優秀な人材を確保したい狙いがある」と話しています。
一方で、就活生が求める初任給の額も変わってきています。
就活情報サイトを運営する「マイナビ」の調査では、2026年卒の就活生が求める“最低限ほしい初任給”は「22万円以上」と答えた割合が、前年より13.8ポイント増え、63%となっています。
理由として、「物価高など経済不安から求める金額が上昇しているのではないか」ということです。
日比麻音子キャスター:
大手企業を中心に初任給が上がっていますが、この状況をどのように見ていますか?
パナソニック社外取締役 ハロルド・ジョージ・メイさん:
最近、役員会に出てもこの話(初任給引き上げの話)がよく出るんです。やはり会社を動かすのは商品やサービスではなく、働いている方々なので、できるだけ優秀な人に来てほしいという気持ちもわかりますが、今、どこも人材不足ですよね。
ですが、「初任給」という言葉に少し気をつけないといけないと思います。
初任給は一つの入口なので、何かパフォーマンスを求めているわけでもなく、「入社すればこの金額がもらえます。初任給が高いうちの方が魅力的ですよ」と募集するのはわかります。
しかし、実は収入というのはそれだけではなく、それに加えて、「福利厚生」や「ボーナス」などもあります。ボーナスに関しては夏と冬の分があるので、これも足していかないといけない。あるいは「出世がどのぐらいできるのか」「食堂があるのか」「駅から近いのか」などいろんなことを考えないといけないんです。
なので、「初任給」というのは一つの目玉商品であって、その他がどうなっているのかも合わせて見ていかないといけないです。
でも今、色々な企業から「初任給引き上げ」の話が持ち上がっていて(人材の獲得)競争が激しくなっているのは間違いないです。
初任給アップによる影響で40代~50代の賃上げはどうなる?
南波キャスター:
初任給以外の色々な要素が就職先選びでかかわってくるとは思いますが、一方で、大卒現役世代の平均月収と比べるとどうなってくるのか見ていきます。
2023年調査で、ボーナスなどを除いた6月の給与です。(厚労省・賃金構造基本統計調査より 全国平均)
【大卒現役世代の平均月収】
30歳~34歳:30万9000円
35歳~39歳:35万4100円
40歳~44歳:39万4700円
45歳~49歳:43万900円
50歳~54歳:47万3500円
こうなると、初任給との格差は今後どうなるのか。みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井さんによると…
新人の頃は初任給が上がる一方で、2~3年目などの指導係も賃上げはされると見ています。
(給与の)逆転現象が起きてしまうと、指導係の社員のモチベーションにも関わってきます。雇用も流動化しているので、転職してしまう人も出てくるかもしれません。
ただ、30代や40代~50代はどうなのか。
▼30代は「一定程度上がるのではないか」と見ていますが、▼40代~50代は「賃上げをしないのではないか」という見立てがあります。
この背景には、年功序列による“高収入”の社員や子育て・住宅ローンを抱えている社員が年収低下のリスクをとって転職する人は少ないと見ているわけなんです。なので、企業側は若手の賃金アップを優先したいと考えていると酒井さんは指摘しています。
今後の人材確保のために企業がすべきこととして、初任給アップはもちろん大事ですが、その後の賃金の伸びが期待できない場合、人材流出のおそれもあります。
みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井さんは「年功序列からの過渡期。年代にかかわらず成果に応じて賃金が上がる制度設計を企業が行うべき」と話していました。
日比キャスター:
働き方も多様化していますが、メイさんは経営の立場からこういった問題をどのように見ていますか?
ハロルド・ジョージ・メイさん:
もう一つの観点から言うと、メリハリをつける企業がどんどん出てくるんじゃないのかなと思います。
メリハリは何かというと、「成果をどれだけ出したら、これだけの対価もプラスで出します」という競争社会ではあるんですが、ビジネスというのは元々競争なので、競争の中でどれだけ成果が出せるのか。それに見合った対価を出すというようなメリハリがもっと出てくるのではないのかなと私は見ています。
日比キャスター:
働き手に対しても色々なチョイスを提案していくということも大事になっていくかもしれません。
==========
<プロフィール>
ハロルド・ジョージ・メイさん
日本コカ・コーラ副社長やタカラトミー社長などを歴任
現在パナソニック社外取締役 アース製薬社外取締役など
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