女子バスケ人気を支えるSNSの「中の人」 リーグ最多7168人集結、その裏で深夜4時まで動いた指先
THE ANSWER / 2024年4月24日 7時43分
■「京王 presents Wリーグプレーオフ2023-2024」ファイナル
活況の女子バスケットボール界に陰の立役者がいる。13日から3日間行われたWリーグプレーオフ決勝。富士通がデンソーを2勝1敗で上回り、16年ぶり2度目の優勝を果たした。第2日はリーグ史上最多の観客動員数7168人を記録。背景には、寝る間も惜しんで女子バスケ界を盛り上げようと尽力したWリーグ広報の奮闘があった。(取材・文=THE ANSWER編集部・鉾久 真大)
開場を待ちわびるファンが、会場をぐるりと囲むほどの列をつくった。
目を輝かせ、思い思いに展望を語るファン。10~30代が特に多く、女性が6割以上を占めた。「町田瑠唯」「馬瓜エブリン」など“推し”のネームタオルを握り、グッズ売り場でアクリルスタンドやカードを吟味。会場通路から客席まで両軍チームカラーの真っ赤に染まった東京・武蔵野の森総合スポーツプラザは、3戦とも試合2時間前から期待と熱気に満ちていた。
その熱気はコートに注がれた。初日を64-57で富士通が取れば、2戦目はデンソーが73-62の逆転勝ち。最終日は一進一退の攻防の末、富士通の89-79で16年ぶりの歓喜に酔いしれた。2日目の日曜は7168人が駆け付け、22年4月17日のトヨタ自動車―富士通戦(代々木第一体育館)の7151人を塗り替えるリーグ史上最多だった。
女子日本代表は2021年東京五輪で史上最高の銀メダル。男子とともに代表の活躍もさることながら、国内リーグも活況を呈する。観客数の記録更新にはスタッフの奮闘があった。
2月のパリ五輪世界最終予選(ハンガリー・ショプロン)。遅い試合は日本時間午前4時頃まで及んだが、Wリーグ公式SNSは活発だった。展開に合わせ、「なんて鮮やかな3ポイント…」「先制点、キターーーーー!」などと興奮気味に1試合10件ほど。選手が叫んだり微笑んだりした宣材写真がタイムラインに並ぶ。機械的ではない、人間味のある投稿。活字なのに熱を感じさせた。
日本から投稿したWリーグ広報担当の神野桃華さん。「盛り上げられるところは最大限盛り上げたい。一緒にみんなで見て、リアルタイムでやったら楽しいだろうなと準備していました」と力を込めた。参考にしたのは現地で見た韓国女子リーグ(WKBL)の会場ビジョン。得点のたびに雄叫びを上げる選手が映し出される。「あ、これSNSでもできるじゃん!」と発想を得た。
2日目にはリーグ史上最多の7168人の観客が入場した【写真提供:Wリーグ】
■男子Bリーグともコラボ「もっと頑張って1万人を目指したい」
会場を盛り上げるのと同じ気持ちで指を動かし、文字を打った。ファン目線の投稿は「中の人最高でした」「公式さんも起きてる!ありがとう!!」と好感を呼んだ。眠気と闘った甲斐もあり、フォロワーは1週間で600人ほど増加(23日現在で約4万3000人)。神野さんは「日本代表の方が注目されているので、『その人たちはWリーグ所属なんだよ』と知ってもらえれば」と願いを込めていた。
無事に最終予選で五輪出場決定。現地からWリーグ観戦を促すメッセージ動画を選手に送ってもらった。「この盛り上がりのままWリーグのレギュラーシーズン、そしてこのプレーオフまで持っていきたい」。翌週の2月23日にリーグ再開。3月3日のトヨタ自動車―デンソー戦(愛知・岡崎市)に今季レギュラーシーズン最多の4821人が来場し、さっそく効果を実感した。
4月2日~12日には、男子のBリーグとの共同企画「SNSコラボ Week」を実施。「評判が良くてありがたい限り。Bリーグしか知らない人にも興味を持ってもらえたら」と新たな層を狙った。バスケ界の人気ぶりには「何よりも選手たちの頑張りがあってこその記録」と感謝し、「嬉しいですが、もっと頑張って1万人を目指したいです」と記録更新を見据える。
裏方の熱意はファンを呼び、選手を後押しする。プレーオフMVPに輝いた富士通の主将・宮澤夕貴は「凄くいい雰囲気の中でプレーできて本当に気持ち良かった」と新記録に感激。元日本代表主将のデンソー・高田真希も「感慨深いものがあった。ファンの期待に応えたいという思い。女子のバスケットに注目して会場に足を運んでくださるのは選手として本当に嬉しいこと」と感謝していた。
米国では7日(日本時間8日)の全米大学選手権女子決勝で、テレビ視聴者数が平均1870万人、最高2400万人を記録。史上初めて男子決勝の視聴者数を上回った。男子主流の競技が多いが、「バスケから女子スポーツを盛り上げられたら」と神野さん。5月3、4日には愛知・稲沢市でオールスター、夏にはパリ五輪を控える。熱い裏方がいる限り、Wリーグの発展は止まらない。(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro-Muku)
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