【阪神】大崩れしない岡田監督の〝詰め将棋〟采配 柏原純一氏「一死からバント」に見た緻密さ
東スポWEB / 2024年4月28日 6時25分
【柏原純一「烈眼」】やはり昨年の日本一チームだ。阪神は簡単には、崩れない。5―4で勝利した27日のヤクルト戦(甲子園)で、それを再確認させてもらった。
前日(26日)4失策した守備陣は、無失策と負の流れを持ち越すことなく、無駄な点を与えるようなことは皆無。対照的に打線は相手の隙をつく、そつのない攻撃をしっかりやり切り、5得点。結果的にスコアこそ1点差も、攻撃における「巧みさ」は最下位のヤクルトとは歴然だった。
試合巧者ぶりが際立ったのは、5回に近本の2ランで3―2と逆転した直後だ。イケイケムードで3番・森下→4番・大山と続くクリーンアップの2人で、追加点となる4点目を奪った。球数が70を越え、疲れの見えたヤクルト・サイスニードに対し、二死から森下が球筋を見極め、四球で出塁。2番手・エスパーダの初球の暴投で二塁へ進塁後、大山が左前適時打を放ち、4点目。積極的な打撃スタイルの森下は一度もバットを振らず、快打の大山もカウント2―2から敵バッテリーがフルカウントを嫌がり、ストライクを取りに来た5球目の直球を狙い、一撃でしとめた。
試合の主導権を引き寄せた直後に「相手が何を嫌がるか」を考え、そのうえで、自分たちが何をすべきか。手にした「流れ」をよりたぐり寄せ、簡単には手放さないようにプレーする。昨年から浸透を続ける岡田野球を象徴する攻撃だった。
4―3と1点差にされた直後の7回の攻撃もしかりだ。一死から近本が安打を放つと、岡田監督は2番・中野に犠打のサインを送り、二死になっても得点圏へ走者を進めることを選択した。結果的にも直後の森下の左前適時打で、ダメ押しの5点目が入った。
しかしながら、仮に彼が凡退し「無得点」で終わっても、敵は目に見えない圧力を与えていたことに変わりはない。ヤクルトは近本の二塁進塁後、3番手左腕・山本から右の4番手・丸山翔へとスイッチ。岡田監督の采配に、敵が敏感に反応した証しだ。この時点で敵の中継ぎをさらに一枚、投入させておけば最悪、その後に同点→延長のリリーフ勝負になったとしても、手数で優位に立つ。まして阪神は後攻め。詰め将棋にように、敵をジリジリと追い詰める岡田采配も冴えわたった。
3連戦の初戦を最悪の内容で落とし、続く2戦目も2回までは完全に敵のペース。それでも慌てず、冷静な試合を運びで、接戦を勝ち抜く。〝大崩れ〟しないチームの戦いぶりだった。(野球評論家)
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