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専業「主夫」の年金ってどうなるの?~遺族給付で注意しておきたいこと~

LIMO / 2020年8月15日 11時55分

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専業「主夫」の年金ってどうなるの?~遺族給付で注意しておきたいこと~

2019年、金融庁金融審議会「市場ワーキング・グループ」報告書の「老後は公的年金以外に2000万円必要」という内容が話題となりました。まだ記憶に新しいという方もいると思います。

さて、一家の大黒柱に扶養されている「専業主婦/主夫」の年金はどのようになるのでしょうか。また、もしも扶養者が先立った場合、遺された家族の年金はどうなるのかについても気になりますね。加入している年金による違いも含めて確認しておきましょう。

年金の区分について

日本の公的年金は、国民年金と厚生年金の2階建てで構成されています。国民年金は20歳以上60歳未満のすべての人が加入する年金で、会社員や公務員はさらに厚生年金に加入します。

公的年金の加入者は、加入内容により「第1号」「第2号」「第3号」の被保険者に分類されます。まずはこの被保険者区分について見ていきましょう。

第1号被保険者

自営業者や学生、また無職の方は国民年金の「第1号被保険者」となります。毎月の保険料は一律で1万6410円(2020年度の額)です。(※1)

65歳から受給できる老齢基礎年金は、満額の場合、1カ月あたり約6万5000円(年額78万1700円)となります(2020年4月からの金額)。(※2)

満額とは、20歳から60歳までの40年間すべての期間保険料を納付した場合を指し、未納期間があると減額対象となります。収入減などの一定の事由に該当する場合は、申告手続きをすることで保険料の「免除」や「納付猶予」といった手続きが可能な場合もあります。

第2号被保険者

会社員や公務員など厚生年金に加入している人は「第2号被保険者」となり、厚生年金と国民年金の両方に加入しています。給与(標準報酬月額)に保険料率18.3%を掛けた金額が、毎月の給与と賞与から天引きされます。そのため老齢厚生年金は給与により違いが出てきます。

厚生労働省の2018年度末のデータによると、第2号被保険者の老齢年金額の平均は、月額14万4000円となっています。(※3)

第3号被保険者

第2号被保険者に扶養されている配偶者(専業主婦/主夫)は第3号被保険者に該当します。扶養されている状態として、年収が130万円未満、かつ、配偶者の年収の2分の1未満であることなどの要件があります。(※4)

(※1)「年金Q&A(https://www.nenkin.go.jp/faq/kokunen/seido/hokenryo/20150331.html)」日本年金機構
(※2)「老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/jukyu-yoken/20150401-02.html)」日本年金機構
(※3)「平成30年度厚生年金保険・国民年金事業の概況(https://www.mhlw.go.jp/content/000578278.pdf)」厚生労働省
(※4)「健康保険(協会けんぽ)の扶養にするときの手続き(https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/jigyosho-hiho/hihokensha1/20141204-02.html)」日本年金機構

専業主婦/主夫の年金ってどうなるの?

このように加入している年金の区分により老後の年金額が変わってきます。専業主婦・主夫の場合、老齢年金はどうなるのか、また、大黒柱が亡くなった時の遺族年金はどうなるのか、加入区分による違いを見ていきましょう。

(1) 会社員の夫と専業主婦の妻

一家を支えるサラリーマン(第2号被保険者)と専業主婦(第3号被保険者)のケースを考えてみます。老後は夫が老齢基礎年金(国民年金)と老齢厚生年金を受給、妻は老齢基礎年金を受給することになります。

厚生労働省が公表している「モデル世帯」の年金額の例(2020年度)によると、夫(平均的な賃金で40年間就労)と妻(40年間専業主婦)が受給する老齢年金は合計で月額22万724円となっています。

また、もし夫が亡くなった場合、妻は遺族厚生年金を受給でき、一定年齢以下の子供がある場合は遺族基礎年金(国民年金)を受給できる可能性があります。

(2)妻は会社員で厚生年金に加入、夫が専業「主夫」のケース

妻が会社員(第2号被保険者)の場合、扶養されている夫は第3号被保険者となり、年金保険料の負担はありません。

加入履歴が国民年金のみであれば、夫が65歳以降に受給できる年金は老齢基礎年金で、満額で月額約6万5000円と想定されます。妻(第2号被保険者)は老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給することになります。

モデル世帯との受給額の違いを想定しておく必要性も
厚生年金は収入(標準報酬月額)により年金額に違いが出てきます。そのため前述の厚労省のモデル世帯と比較して、家庭ごとに年金額が異なる見込みです。老齢基礎年金(国民年金)は加入月数のみが支給額に反映されますが、老齢厚生年金は給与が年金額に反映されます。

ここで、国税庁「平成30年分民間給与実態統計調査結果について(https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2019/minkan/index.htm)」から、給与所得者の1人当たりの平均給与を、雇用形態別にみていきます。

■正規雇用者の平均給与:503万5000円
・男性:559万9000円
・女性:386万円

■非正規雇用者の平均給与:179万円
・男性:236万円
・女性:154万1000円

モデル世帯では男性の平均給与をもとに老齢厚生年金の受給額を算出していますので、老齢厚生年金の額については個人差がある点を想定しておく必要があるといえるでしょう。

老齢年金の見込み額については、毎年誕生月に日本年金機構から郵送される「ねんきん定期便(https://www.nenkin.go.jp/faq/nteikibin/index.html)」で、過去の第1号被保険者期間、厚生年金加入期間、受給資格期間を確認できます。また、「ねんきんネット(https://www.nenkin.go.jp/n_net/)」でも個人の年金見込み額について詳細に確認できます。

●第3号被保険者の「主夫」が受け取る遺族年金について●

第2号被保険者である妻が先立った場合、生計を維持されていた夫は遺族厚生年金の支給対象となる可能性があります。ただし年齢面での要件があり、

妻が亡くなった当時、夫が55歳以上であること

支給開始は夫が60歳になってから

などの条件があります。(※6)

一方、国民年金がもととなる遺族基礎年金については、死亡した人に生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」が受給対象となります。子については

18歳になった年度の3月31日まで

20歳未満で障害等級1級または2級の障害の状態にあること

上記のどちらかを満たし、かつ、婚姻していないことが条件となります。(※7)

(3) 妻が国民年金に加入、夫が専業「主夫」のケース

妻がフリーランスや自営業の場合、夫婦とも第1号被保険者として国民年金に加入することになります。保険料は1人あたり月額1万6410円です。夫婦とも加入実績が国民年金のみの場合、将来の年金も老齢基礎年金のみとなり、満額で1人あたり月額約6万5000円と想定されます。

●専業「主夫」の遺族年金について●

扶養者である妻が先に死亡し、加入履歴が国民年金のみの場合は、生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」が遺族年金の受給対象となります。子のいない夫の場合は受給対象外となり、子がいる場合も末の子供が18歳になった年度の3月31日に達すると、支給終了となる、などの条件があります。(※8)

(※5)「令和2年度の年金額改定についてお知らせします(https://www.mhlw.go.jp/content/12502000/000588114.pdf)」厚生労働省
(※6)「遺族厚生年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/20150424.html)」日本年金機構
(※7)(※8)「遺族基礎年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/20150401-04.html)」日本年金機構

さいごに

高齢者世帯の収入の大半を占める公的年金。厚生労働省の調査によると、高齢者世帯の所得の約6割(61.1%)が公的年金となっています。収入のすべてが公的年金という世帯も5割超(51.1%)となりました。(※9)

まずは年金の加入状況を調べて、手続きや申告の漏れはないかを確認しておきましょう。人生100年時代に備えて現状をしっかり把握しておくことが大切だといえるでしょう。

(※9)「国民生活基礎調査(平成30年(2018年)度)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa18/dl/03.pdf)」p11 厚生労働省

【参考】
(※1)「年金Q&A(https://www.nenkin.go.jp/faq/kokunen/seido/hokenryo/20150331.html)」日本年金機構
(※2)「老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/jukyu-yoken/20150401-02.html)」日本年金機構
(※3)「平成30年度厚生年金保険・国民年金事業の概況(https://www.mhlw.go.jp/content/000578278.pdf)」厚生労働省
(※4)「健康保険(協会けんぽ)の扶養にするときの手続き(https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/jigyosho-hiho/hihokensha1/20141204-02.html)」日本年金機構
(※5)「令和2年度の年金額改定についてお知らせします(https://www.mhlw.go.jp/content/12502000/000588114.pdf)」厚生労働省
「平成30年分民間給与実態統計調査結果について(https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2019/minkan/index.htm)」国税庁
「ねんきん定期便(https://www.nenkin.go.jp/faq/nteikibin/index.html)」日本年金機構
「ねんきんネット(https://www.nenkin.go.jp/n_net/)」日本年金機構
(※6)「遺族厚生年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/20150424.html)」日本年金機構
(※7)(※8)「遺族基礎年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/20150401-04.html)」日本年金機構
「『いっしょに検証!公的年金』30~40代の皆さんへ(https://www.mhlw.go.jp/nenkinkenshou/generation/30_40.html)」厚生労働省
(※9)「国民生活基礎調査(平成30年度)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa18/dl/03.pdf)」p11 厚生労働省

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