1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

コロナ禍で進む「ジョブ型雇用」は社畜解放のきっかけになるのか

LIMO / 2021年1月19日 10時5分

写真

コロナ禍で進む「ジョブ型雇用」は社畜解放のきっかけになるのか

新型コロナウイルス禍によるテレワーク拡大で社員の評価が難しくなってきています。このような中、日本企業の雇用システムを欧米流の「ジョブ型」に切り替えるべきとする議論が盛んになっています。

果たして日本で「ジョブ型雇用」は浸透するのか。それが定着するならば、どのような形態をとるのか。そして未来の“働き方"について考えていきます。

ジョブ型雇用は同一労働同一賃金とも相性が良い

そもそも、「ジョブ型雇用」という言葉が日本で注目を集めたのは、2000年代の終わり頃からでした。労働問題の第一人者として知られる濱口桂一郎氏の著書『新しい労働社会(https://www.amazon.co.jp/gp/product/B07FZVHLSL/ref=as_li_qf_asin_il_tl?ie=UTF8&tag=navipla-22&creative=1211&linkCode=as2&creativeASIN=B07FZVHLSL&linkId=45058fcc8dd009b571335d609f92009c)』(岩波新書/2009年)などが発端となりました。

日本独特の「入社」という言葉や新卒一括採用制度に象徴される、企業共同体のメンバーとして迎え入れ職務を限定しない「メンバーシップ型」。これに対して、欧米をはじめ世界標準とされる雇用システムは、職務内容や労働時間などを明確化した雇用契約を結び、その範囲内でのみで働く「ジョブ型」であるというのが、その基本的な考え方です。

ジョブ型雇用システムは2020年4月から適用が始まった「同一労働同一賃金」とも、評価基準が明確化されるため相性が良いと言われています。これも現在、注目を集めている一因だと考えられます。

ジョブ型雇用で社畜から解放される!?

ジョブ型雇用が日本で実現されたら、どうなるか。たとえば身近な例としては「オレは我が社のムードメーカーだから」という存在理由の社員は、かなり危険な立場になります。「社内のムードメーカー」「コミュニケーションの潤滑油」などの“仕事"はメンバーシップ型雇用システム独特のものですから。

実はジョブ型雇用システムを「ワークスタイルの変革」としてとらえるのは、誤りだと思っています。ワークスタイルどころの話ではなく、社会システムの変革ではないでしょうか。まず、新卒一括採用が不要になります。新卒一括採用は無色透明に近い新人を採用し、ゼネラリストをつくりあげていくものですから。

さらに労働市場の流動化、大転職時代がスタートします。実は日本企業におけるゼネラリストは、各企業の個別事情に過剰に準拠するため、異企業との互換性の低い“ゼネラリスト"になるという実情があります(これは終身雇用が維持できるなら問題ないのですが)。

「社」に就くのではなく、明確化された「業務(ジョブ)」に就く以上、知識・スキルは標準化され、転職市場は加速します。日本のサラリーマンの自社へのロイヤリティ(忠誠心)は、ジョブ型の欧米社会とは比較にならないほど高いですが、これが希薄化します。つまり、もう、社畜なんてものとは訣別です。

ジョブ型雇用の世界はバラ色か

ではジョブ型雇用の世界はバラ色なのでしょうか。欧州の事例を中心にみていきましょう。欧州のジョブ型労働は、ジョブとジョブの間の敷居が高く、キャリアアップはなかなか容易ではないという現実もあります。

ジョブ型労働は、業務内のパーツをジョブに標準化して切り出すわけですから、そこで働く人々は定型化された作業を繰り返すことが通常となります。日本のように新卒で正社員として入社し、事務作業からスタートとして、ある一定の年齢に達すれば管理職となるようなキャリアパスは通常、用意されていません。

欧州の管理職は、大学院で経営学等の専門的知識を身につけた一部のエリートが、キャリアを“管理職の卵"としてスタートさせるのが通常です。

当然、ジョブ型ワーカーでは年収も20代で300万円、50代になっても350万円位というケースも珍しくありません。定型的な仕事を繰り返すジョブ型ワーカーとスーパーエリート。「欧米には日本人の知らない2つの世界がある」とする論評も存在します。

EUの近年の労働市場における推奨モデルは北欧発の「フレキシキュリティ」です。これは高い雇用流動性を実現しながら、同時に手厚い失業保障や職業訓練を前提とするモデルです。つまりジョブ型雇用・転職を前提とした社会システムが構築されているわけです。

派遣社員という究極のジョブ型社員

ここまで書いてきて、最後にちゃぶ台返し的に話を進めます。「日本企業の雇用システムはメンバーシップ型である」という前提への疑問です。実のところ、これは正社員から見た労働市場観という気がします。日本には非正規雇用や派遣社員も数多く存在します。派遣社員はジョブ型雇用の社員です。

労働者派遣法が施行されたのが1986年。バブル崩壊後、派遣社員は「雇用の調整弁」として機能してきた一方、日本のジョブ型雇用の先駆けとも言えるのではないでしょうか。

日本の派遣社員の「使われ方」は企業によって非常に異なります。定型的な作業に従事することも多いのですが、正社員/ゼネラリストのアシスタントとしてスタートして「彼女(派遣社員)なしには、ウチの課は回らんよ」というようなケースも存在します。

これは部分最適化が得意な日本固有の現象ですが、実はそこにヒントがある気がします。正社員でジョブ型雇用に関心のある人にとって、参照モデルは身近にいる“優秀な派遣社員"なのかもしれません。

もちろん現在の正社員 vs. 派遣社員の構造が最適解とは到底、考えられません。ただ未来のカタチとしては、正社員と派遣社員という境界が徐々にとりはらわれ、その中間域として「ジョブ型雇用」が成立するというのが理想的なロードマップなのではないのでしょうか。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください