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環境重視企業の株を買うと環境は改善するのか? ESG投資と”美しい心”

LIMO / 2021年6月6日 19時35分

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環境重視企業の株を買うと環境は改善するのか? ESG投資と”美しい心”

ESG投資が人気なようですが、 ESG投資が必ずしも環境等に良い結果をもたらすとは限らない、と筆者(塚崎公義)は考えています。

ESG投資が人気

ESG投資とは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス=企業統治)の3つの観点から投資先企業等を選ぶ投資のことですが、広すぎて論点が絞れないので、本稿では環境について論じることにしましょう。

環境は重要ですから、企業が環境を重視してくれれば素晴らしい、と筆者は考えていますが、もともと企業は金儲けの道具ですから、環境に優しくするインセンティブは持っていないはずです。

政府が環境規制を行なって公害企業に罰則を課せば最低限の環境は守れるのでしょうが、それ以上に企業に環境を重視してもらうためにはどうすれば良いのでしょうか。

おそらく、その答えとして「人々が環境重視企業の株を買えば、企業は環境重視企業になろうと努力するはずだ」ということで ESG投資が流行るようになったのだと筆者は理解しています。

ちなみに、筆者は詳しくありませんが、太陽光発電は環境に優しく、石炭火力発電は環境に優しくない、と言われているようですから、本稿では仮に環境に優しい企業を「太陽光企業」、環境に優しくない企業を「石炭企業」と呼ぶことにしましょう。

儲かるからESG投資、というのは本稿の考察対象外

なぜ ESG投資をするのか、と問われて「 ESG投資は儲かるから」と答える人もいるでしょう。たとえば「将来、政府は環境規制を厳しくするだろうから、太陽光企業への補助金と石炭企業への罰金が増えるだろう。それなら、太陽光企業の株価が上がるはずだから、今のうちに買っておこう」という人ですね。

あるいは「 ESG投資が流行りだから、多くの投資家が ESG投資をするだろう。それならESG株が上がるだろうから、先回りして買っておこう」という美人投票的な投資もあるかもしれません。

そうした考え方は否定しませんが、それは「儲かりそうな企業に投資する」という普通の投資ですね。ハイテク株投資等々と同様に、自分の利益のための投資というわけです。それは重要なことですが、本稿の考察の対象外としましょう。

機関投資家のESG投資は不思議な現象

個人投資家が美しい心で「儲からなくて良いから地球環境に貢献したい」と考えて太陽光企業に投資するのは理解できますが、機関投資家はどうでしょうか。たとえば年金基金は年金保険料を支払った人々の意向に沿った運用をすべきであり、それは必ずしも清らかな心に基づくものではないでしょう。

可能性としては、上記のように「ESG投資は儲かる」と考えているのかもしれませんし、「普通の投資であってもESG投資と言っておけば我々の評判が高まる」と考えているのかもしれません。

もう一つの可能性としては、「世界中の株を広く持っているので、世界経済の将来に強い関心があり、環境悪化により世界経済が悪影響を受けるのを避けたい」ということが考えられます。

もっとも、自分だけが環境企業に投資したくらいで環境が改善して世界経済への悪影響が避けられるのか、そもそも環境企業への投資は環境を改善するのか、といった問題は残ります。

心美しい投資が良い結果をもたらすとは限らない

機関投資家はともかく、多くの個人投資家が美しい心で「儲からなくて良いから地球環境に貢献したい」と考えて太陽光企業に投資するとします。それによって、太陽光企業の株価は上がり、株式益利回りは下がるでしょう。

そうなると、今まで太陽光企業の株を持っていた強欲な投資家たちは、相対的に株式益利回りの高い石炭企業の株に乗り換えるでしょうから、結果としては株価に大きな変化が起きないかもしれません。

ちなみに、ここで強欲投資家というのは、地球環境のことなど考えずに自分の利益だけを追求する人、という意味には限りません。株式投資では地球環境のことなど考えずに大いに儲けて、その儲けで省エネグッズを買おう、という人も含めて考えることとします。

仮に、人々が太陽光企業の株を買えば、多少は太陽光企業の株価が上がるとしましょう。そうなれば、石炭企業の経営者は「我が社も太陽光企業に変身すれば株価が上がるだろう」と考えて変身するかもしれません。

しかし、「石炭で作られた電力の方が安いなら、そちらを買いたい」と考える消費者は減らないかも知れず、そうなれば残った石炭企業はライバルが減った分だけ利益が上がり、株価も上がるかもしれません。

まあ、そうは言っても効果が小さいというだけで、人々が太陽光企業の株を買えば太陽光企業の株価は少しは上がり、変身する企業も少しは出てくるでしょうから、本稿としては「ESG投資によって地球温暖化のスピードが遅くなる効果は皆無ではない」と期待しましょう。

ESG投資に名を借りた商売に利用されないように

ESG投資に環境等を改善する効果があるか否か、という問題とは別に、「ESGを語れば客が集まる」と考えて、実際にはESGとあまり関係のない銘柄も組み込んだ普通の投資信託をESG投信と名付けて売っているだけ、という業者もいるでしょうから要注意です。

投資信託を購入する場合には、組み入れ銘柄をよく見ることが必要でしょうが、心の美しい投資をするなら、個別株の方が良いような気がします。

儲けるための投資であれば「銘柄分散をしておかないと損をするリスクがある」わけですが、地球環境のために株を買うのであれば、太陽光企業の株を買えば良いので、結果として株価が上がるか下がるかを気にする必要はなく、したがって銘柄分散の必要性も低いからです。

本稿は以上ですが、くれぐれも投資は自己責任でお願いします。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

<<筆者のこれまでの記事リスト(http://www.toushin-1.jp/search/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)>>

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