住宅ローン「繰上げ返済」のメリット・デメリット【FP解説】
LIMO / 2021年8月12日 20時5分
住宅ローン「繰上げ返済」のメリット・デメリット【FP解説】
~損かトクかを、見極めるために~
住宅ローンの繰上げ返済は、利息の支払いが減るので得、借金が減るので気持ちが楽になるなど、やらないよりもやった方がいいと思いがちです。
しかし、超低金利が続いている現在では、繰上げ返済の効果は低下しています。そこで今回は、繰上げ返済のメリットとデメリットを解説。ご自身の状況と照らし合わせて繰上げ返済を行うかどうか、考えていきましょう。
繰上げ返済のメリット
繰上げ返済には、返済額を変えずに返済期間を短くする「期間短縮型(図1)」と返済期間はそのままに返済額を減額する「返済額軽減型(図2)」があります。
それぞれ繰上げ返済をすることによって、本来払うべき利息分が減りますが、期間短縮型の方が効果は大きくなります。
期間短縮して早めに完済させるメリットは、利息の支払いを効果的に減らせるだけでなく、借金がなくなることで精神的に楽になれることが大きいと思います。
一方、返済額軽減型は、期間短縮型よりも利息は減りませんが、余裕のあるうちに多く返済しておき、教育費が重く圧し掛かってくる時期の月々の返済額を減らすなど、時期によって波がある家計を安定させる効果があります。
メリット1.支払うべき利息が減る
メリット2.早く完済できる
メリット3.苦しい時期の負担を減らせる
繰上げ返済のデメリット
次に繰上げ返済のデメリットをみていきましょう。
■デメリット1.手元の資金が減る
当然ながら、繰上げ返済にはまとまった資金が必要です。無理をして繰上げ返済に充ててしまうと、手元の資金が減ってしまい、生活に支障をきたす恐れがあります。その結果、別のローンを組んでしまうという本末転倒な事態が起こるかもしれません。
住宅ローンの金利は超低金利と言われる状況が長く続いています。これほど安く借りられるローンは他にないという状況です。そのため、急いで返済するよりは、手元にある程度の資金を残しておいた方がいざという時に安心です。
■デメリット2.手数料がかかる
繰上げ返済には基本手数料がかかります。手数料は金融機関によってまちまちですが、変動金利と固定金利、一部繰上げ返済と全部繰上げ返済などによっても手数料が異なります。また、インターネットで手続きする場合は無料となる場合もあります。回数が多くなればそれだけ手数料もかかるので、繰上げ返済をするなら計画的に行いましょう。
■デメリット3.住宅ローン控除が減る・受けられなくなる
繰上げ返済をする場合、返済額(借入残高)が大きいほど効果があるため、早めにした方が利息軽減効果が高くなります。一方、住宅ローン控除は原則入居した年以降の10年間適用を受けられます。借入期間が10年以上の住宅ローンを利用した場合に、年末の借入残高×1%(上限40万円)が所得税(控除しきれない場合は住民税)から控除されます。つまり残高が多いほど控除額が多くなるので、繰上げ返済をすると控除額が減ることになります。
そこで繰上げ返済による利息が減る分と、住宅ローン控除で税金が減る分を比較すればいいわけです。この基準となるのが住宅ローン控除の控除率1%です。住宅ローンの借入金利が1%以上であれば、繰上げ返済の効果の方が高くなり、1%未満であれば、住宅ローン控除を受けた方が得といえます。実際は繰上げ返済の手数料や借入額、所得によっても変わってきますので、このとおりではありませんが、判断する際のひとつの目安となるでしょう。
また、繰上げ返済をして借入期間が10年未満となってしまうとそれ以降の住宅ローン控除が受けられなくなってしまうのでこの点も気を付けましょう。
■デメリット4.団体信用生命保険の保険期間が短くなる
住宅ローンには基本、団体信用生命保険、通称「団信」という生命保険がついています。これは、住宅ローンの契約者が死亡・高度障害などによって、住宅ローンの返済ができなくなった時に、保険金が下りてローンの残高が完済される保険です。繰上げ返済をして残高を減らすと、団信の保障額が減り、期間を短縮してしまうと、団信の保障期間が短くなります。
さいごに
ここまでのお話を踏まえ、住宅ローンの繰上げ返済を「した方がいいケース」と「しない方がいいケース」をお伝えします。
◆繰上げ返済をした方がいいケース◆
変動金利で借り入れをしていて、金利が上昇した場合、繰上げ返済による利息を減らす効果は大きくなります。
そのため、今後金利が上昇すると予想している場合は、繰上げ返済をして早めの完済を目指すとよいでしょう。ただし、繰上げ返済にあてる資金は家計に影響しない余裕資金で行いましょう。
◆繰上げ返済をしない方がいいケース◆
住宅ローンの借入金利が住宅ローン控除の控除率1%以下である場合は、利息よりも控除額の方が多いため、控除期間中は繰上げ返済はしない方がいいでしょう。
また、今後、教育費の負担が増える、収入が安定しないなど、家計に余裕がない場合は繰上げ返済よりも、手元資金を増やすことに注力しましょう。
他にも、小さい子どもがいる働き盛りの年代では生命保険としての団信のメリットは大きいため、繰上げ返済はせずに保障期間を長くとった方がいいでしょう。
参考資料
住宅金融支援機構「繰上返済:長期固定金利住宅ローン 【フラット35】」(https://www.flat35.com/user/kuriage/hensai.html)
三井住友銀行「繰り上げ返済の考え方:みらいのおかねガイド-住宅編」(https://www.smbc.co.jp/kojin/special/moneyguide/myhome/after-purchase/prepayment/)
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