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「景気予想屋」と「株価予想屋」の言うことは何が違うのか

LIMO / 2021年8月22日 19時35分

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「景気予想屋」と「株価予想屋」の言うことは何が違うのか

景気予想屋と株価予想屋は全く異なる人々なので、目的に応じてどちらの話を聞くか使い分けが必要だ、と筆者(塚崎公義)は考えています。

経済を語る人は4種類

世の中に経済を語る人は大勢いますが、筆者はこれを大きく4つのグループに分けて考えています。

第一は理論が現実より大切だと考えている経済学者、第二は景気を予想するために経済を眺めている景気の予想屋(筆者はこのグループの末席です)、第三は株価を予想するために経済を眺めている株価の予想屋、第四は常に大恐慌の到来等を予言し続けるトンデモ屋です。

経済学者は経済学理論は理解していますが、それで経済が説明できるわけではありません。生きた経済は複雑すぎて、現在の経済学理論では説明がつかないからです。

その最大の原因は、人々の心理が影響することが経済学理論に織り込めていないことです。あと100年くらいすると、経済学が心理学を応用することで経済が説明できるようになると期待しているのですが。

というわけで、経済学は現実の経済を理解するためにはあまり役に立ちませんが、それでも経済学を学ぶことは重要です。数学と同様、精緻な理論体系なので、論理的な思考力が身につくからです。というわけで、筆者も大学では経済学を教えています。

景気予想屋と株価予想屋については後述するとして、トンデモ屋は優れたビジネスモデルです。「特に何も起きません」というよりも「こういう問題があり、こういうリスクがあり、大変なことになる」と言う方が話が面白いですし、固定客もそれなりに掴めるからです。

予想が当たる必要はありません。誰もそんなことは期待していないからです。それでも時々本当の大不況が来ますから、その時には「何年も前から私が正しく予想していた通り、大不況が来た」とでも言えば良いのですから。

筆者も、この優れたビジネスモデルを採用したくてウズウズしているのですが、いまだ自尊心が邪魔していて実行には移せていません(笑)。

景気予想屋は幅広く、株価予想屋は的を絞って経済を見る

景気予想屋の目的は、当然ながら景気そのものを予想することですから、経済指標を幅広く見て、景気の大きな流れを把握しようとします。景気の転換点付近では、景気を回復させる力と悪化させる力が綱引きをする結果として良い経済指標と悪い経済指標が混在しており、綱引きの結果を予想することが重要ですから。

一方で、株価予想屋は株価を予想することが目的ですから、その目的のために必要な経済指標はしっかり見ますが、それ以外の経済指標には興味を示しません。それは、株価が美人投票の世界だからです。

米国の雇用統計が発表されると、株価が大きく動きます。したがって、多くの投資家が雇用統計に注目しています。そのため、株価予想屋は雇用統計に関して詳細な予測を行なって顧客に提示する必要があるわけです。

一方で、景気予想屋から見ると雇用統計と同じくらい重要な鉱工業生産については、投資家たちがほとんど注目していないので、株価予想屋も鉱工業生産については興味を示さないのです。

鉱工業生産が発表されても株価が動かないことが多いので、多くの投資家は鉱工業生産に注目していません。そんな時に株価予想屋が詳細な予測を行なって顧客に提示しても見てもらえません。それなら、その労力を雇用統計の一層詳しい予測に用いるべきなのです。

こうして、雇用統計は皆が注目するから雇用統計発表日には株価が動き、皆がいっそう注目するようになる一方で、鉱工業生産は皆が注目しないので発表日にも株価は動かず、いっそう誰も注目しないようになる、というわけですね。景気予想屋を除いては、ですが(笑)。

景気予想屋は拙速を嫌い、株価予想屋は機動的に見方を変える

景気予想屋は、経済指標をじっくり眺めます。経済指標は振れるので、良い数字や悪い数字が出ても一喜一憂せずに景気の大きな流れを把握するように、と教育されるからです。

一方で、株価予想屋はそんなことをしていたら株価が先に動いてしまい、顧客に叱られてしまいますから、振れる経済指標に一喜一憂します。

景気予想屋は株価予想屋のことを「景気判断が拙速だ」と批判し、株価予想屋は景気予想屋を「景気判断の切り替えが遅すぎる」と批判しているかもしれませんね。

目的に応じた使い分けのために、金融政策に対する姿勢を見る

筆者は景気予想屋の末席に位置するものですが、決して景気予想屋が株価予想屋より優れているなどと言うつもりはありません。両者は違うものなので、優劣を比べるべきではないのです。

景気を予想したい場合、たとえば来年度の生産計画を策定するような場合には景気予想屋の話を聞けば良いでしょうし、株式投資の参考に経済の話を聞きたいならば株価予想屋の話を聞けば良いでしょう。

ちなみに筆者も、趣味で株式投資を楽しんでいるので、株式投資について考える時には株価予想屋の話を参考にしています。別に彼らを忌み嫌っているというわけではないのです(笑)。

とは言え、一般の人にとって、誰が景気予想屋で誰が株価予想屋であるのか、判断が難しいかもしれません。その場合には、金融政策の話が詳しいのは株価予想屋、金融政策にあまり詳しく触れないのが景気予想屋だと考えて良いでしょう。

金融政策が景気に影響することはあまりありませんが、金融政策は株価には大きな影響を与えますから、景気予想屋はあまり注目せず、株価予想屋は大いに注目する、というわけですね。

なお、誰が経済学者であるかは、理屈っぽいことを言っているか否かで判断しましょう。誰がトンデモ屋であるかは、各自が独自の判断基準で判断しましょう(笑)。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

<<筆者のこれまでの記事リスト(http://www.toushin-1.jp/search/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)>>

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