令和最初の下落相場は一服?その裏で進行する「株価水準の温度差」
トウシル / 2019年5月20日 17時0分
令和最初の下落相場は一服?その裏で進行する「株価水準の温度差」
日経平均の下落はひとまず落ちついた印象
先週の国内株市場ですが、週末5月17日(金)の日経平均株価終値は2万1,250円でした。前週末の終値(2万1,344円)からは94円ほどのマイナス、週足ベースでも2週連続の下落となりました。米中摩擦の悪化に対する警戒をきっかけに始まった下落相場の余韻が先週も続いた格好ですが、下げ幅からすると、下落の勢いがひとまず落ち着きつつあるようにも感じます。
先週の値動きを「下落相場の一服」と考えれば、今週は戻りを試す展開が期待できるわけですが、実際のところはどうなのでしょうか?まずはいつもの通り、下の図1で足元の状況から確認します。
■(図1)日経平均(日足)の動き(2019年5月17日取引終了時点)
先週の日経平均ですが、値動きをたどると、2万1,000円水準の攻防がメインだったことがうかがえます。実際にローソク足の形に注目すると、いわゆる「ヒゲ」の長い線が多くなっています。また、取引時間中にこの水準を下回る場面が何度か見られたものの、終値ベースでは一度も下回ることはありませんでした。そのため、市場心理としては、「下値を探る動きよりも下値を拾う動き」の方が優勢だったと思われます。
さらに、5月に入ってからずっと下回っていた5日移動平均線も週末17日(金)の取引で上抜けてきましたので、冒頭でも触れた通り、下落が一服した印象があります。
日経平均・NYダウ共に、75日移動平均線とその先の節目乗せが焦点に
こうした株価下落の落ち着き感は週足のチャートでも見てとれます(下の図2)。
■(図2)日経平均(週足)の動き(2019年5月17日取引終了時点)
週足チャートで見た、日経平均のローソク足は下ヒゲの長いものとなっており、株価の下げ幅を縮小させていたことが分かります。しかも、ローソク足の実体は陽線で、かつ26週移動平均のところで踏みとどまっており、「相場を支えている感」があります。
もっとも、話を再び図1に戻すと、週末17日(金)の取引では、上値が75日移動平均線のところで抑えられて上げ幅が縮小し、上ヒゲが長くて実体が短い「十字線」の形になっています。
十字線は迷いを示す線と言われていますので、下値を拾うことはできても、さらなる株価上昇にはまだ迷いがあり、次の下落への警戒が続いていることを反映しているように見えます。言い換えれば、チャートの形からは明確な売買サインをつかみにくいことも意味しています。
そのため、今週の日経平均は、外部環境の材料に振り回されやすい環境の中、75日移動平均線を上抜け、2万1,500円や2万2,000円といった節目を試すことができる展開になるかが注目されそうです。実は、米国のNYダウに目を向けても、日経平均と同様に、75日移動平均線の上抜けとその先にある節目(2万6,000ドル台)乗せが焦点になっています(下の図3)。
■(図3)NYダウ(日足)の動き(2019年5月17日取引終了時点)
TOPIXの動きは、楽観シナリオの裏で鳴く「炭鉱のカナリア」?
つまり、日米の株価指数について、今週はその注目点が共通しているわけですが、株価水準についても見ていきたいと思います。比較対象は、「昨年末の下げ幅に対する戻りの水準」です。
NYダウは昨年末の下げ幅の9割以上を戻した後、下げ幅の76.4%水準のところに位置しています(下の図4)。
■(図4)NYダウ(日足)の動き その2(2019年5月17日取引終了時点)
一方、日経平均については、昨年末の下げ幅の61.8%戻しを達成した後に失速し、38.2%戻しのところで下げ止まって、再び50%戻しをうかがおうとしているところに位置しています(下の図5)。
■(図5)日経平均(日足)の動き その2(2019年5月17日取引終了時点)
さらに、TOPIX(東証株価指数)についても見ていきます。こちらは昨年末の下げ幅の38.2%から50%戻しの範囲内でもみ合いが続いた後、足元では23.6%戻しのところまで下げ幅を拡大する場面がありました(下の図6)。
■(図6)TOPIX(日足)の動き(2019年5月17日取引終了時点)
以上のように、下落幅に対する株価位置でNYダウ、日経平均、TOPIXを比べると、株価水準にかなりの温度差があります。
日本株の戻りの鈍さに対する指摘は今に始まったわけではありませんが、特に最近のTOPIXについては、年初の水準まで株価が下落していたことや、日経平均とNYダウ共通の注目点である75日移動平均線についても、TOPIXについては25日移動平均線との「デッドクロス」実現が視野に入っていて、かなり状況が悪くなっています。
そのため、TOPIXが単純に出遅れているというだけでなく、NYダウや日経平均が描く楽観シナリオの裏で鳴いている「炭鉱のカナリア」として悲観シナリオに抑えられている可能性があり、今後はTOPIXが堅調さを見せられるかが相場安定のバロメーターとして意識されるのかもしれません。
(土信田 雅之)
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