平均利回り4.21%!増配期待の高配当株ランキング:3月決算銘柄
トウシル / 2021年3月18日 6時0分
平均利回り4.21%!増配期待の高配当株ランキング:3月決算銘柄
日経平均は30年半ぶりの3万円大台を一時回復
直近1カ月(2月15日~3月15日)の日経平均株価は0.8%の上昇となりました。2月15日には1990年8月以来となる3万円の大台を回復し、翌16日には一時3万714円の高値をつけています。その後は2万8,308円まで一時調整しましたが、3月15日にかけてあらためて上値追いの展開になり、再度の3万円台乗せをうかがう状況となっています。
米国の景気刺激策成立に対する期待、新型コロナウイルスワクチンの普及期待などが、引き続き相場を押し上げる材料となりました。3万円台乗せ後は、達成感も加わった過熱警戒感の高まり、米国長期金利の上昇を受けて、売りが優勢となる局面がありました。
国債入札の不調で米長期金利が1.6%台にまで上昇したことから、26日には日経平均が1,200円を超える下げ幅となりました。この下げ幅は2016年6月24日以来の大きさになっています。
3月に入っても、金利上昇を映したグロース株売りの流れが続き、4日には一時800円超、5日にも一時600円超の下落と、荒い値動きが続きました。ただ、その後は長期金利の上昇も一服し、日経平均も落ち着きを取り戻してきています。
この期間の物色としては、長期金利の上昇を背景に銀行株が強い動きとなりました。また、グロース売り・バリュー買いの流れが続いたことで、海運や鉄鋼の主力銘柄がバリュー株の代表として買い進まれました。
一方、情報通信やサービスセクターの中小型株で弱い動きが目立ち、キーエンス(6861)、日本電産(6594)、レーザーテック(6920)など成長期待の高いハイテク優良株も売り込まれました。
個別では、大容量全固体電池の開発報道で日立造船(7004)が急伸、楽天(4755)は日本郵政との資本提携が好感され、リコー(7752)や三井物産(8031)は大規模な自己株式取得実施の発表で買われました。また、ビットコインの時価総額1兆ドル突破を受けて、マネックス(8698)など仮想通貨関連銘柄も人気化しました。
金利上昇への警戒感が続く、相対的には引き続きバリュー優位の展開に
3万円大台乗せで一服感が強まった日経平均ですが、目先は引き続き上値の重い展開も想定されます。米国10年債利回りは足元で再度1.6%台に乗せてきています。3月16~17日にはFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催されますが、緩和的な金融政策の長期化が見込まれる一方、足元の長期金利の上昇が容認される状況となれば、当面は金利動向に対する警戒感が続いていくことになりそうです。
また、18~19日の日銀金融政策決定会合は、金融緩和の点検結果が公表されるため注目度が高い状況にあります。とりわけ、ETF(上場投資信託)購入策は抑制方向となる可能性が高く、織り込みが進みつつあるとはいえ、日経平均株価にはマイナス材料とされてくるとみられます。
国内では、1都3県における緊急事態宣言の解除が見込まれるなど、ポジティブな材料もありますが、グロース株や日経平均寄与度の高い銘柄の先行き不透明感が強い中、指数の上昇は限られることとなりそうです。
毎年4月の初旬には国内機関投資家の益出し売りが話題になります。日経平均が3万円台を回復している状況下、今年はこうした益出し売りのボリュームが例年以上に増加する可能性もあり、3月年度末にかけては、こうした需給要因も警戒されることになりそうです。
いずれにせよ、足元の高い株価水準には、世界的な大規模金融緩和効果が大きく影響しています。米長期金利の上昇、日銀のETF購入策変更などは、現在の高株価が成り立つ前提の変更をこの先示唆するものとして、警戒しておく必要があると考えます。
足元では村田製作所(6981)に投資判断格下げの動きが観測されました。買い推奨オンリーだった銘柄であり、こうした見方の変化はアナリストの高評価銘柄には続く可能性もあるでしょう。
主力のグロース株にはこのタイプの銘柄が多く、今後はアナリストの投資判断格下げの動きなども、グロース株のリスク要因となりそうです。
一方、2022年3月期業績は総じて回復に転じる銘柄が多く、それに伴う増配の動きなども増えるものとみられます。3月末の配当権利落ち後も、高利回りのバリュー株などが相対的に優位になると判断します。
モメンタムが好転している高利回り銘柄は、新年度の増配も期待
2022年3月期の企業業績は、コロナ禍からの回復で、総じて大幅な増益が期待できる状況でしょう。業績拡大に伴っての増配の動きなども想定できるため、3月末権利落ち後も、高配当利回り銘柄の投資妙味は相対的に大きいと判断されます。
なかでも、足元で業績モメンタムが大きく好転している銘柄などは、より新年度の好業績・増配期待などが高まりやすいと判断されます。
下表は、時価総額1,000億円以上で配当利回り3.5%以上の銘柄の中から、コンセンサスの経常利益予想が3カ月前と比較して大きく拡大しているものをスクリーニングしたものです。数値は全て楽天証券のスーパー・スクリーナーを使用しています。
コンセンサス予想の上方修正はイコール業績モメンタムが良好と判断してよいと考えられます。
足元の業績モメンタムが良好な高配当利回り銘柄ランキング(3月15日時点)
コード | 銘柄名 | 予想 配当 利回り |
株価 | 時価 総額 |
経常 利益 変化率 |
---|---|---|---|---|---|
8604 | 野村HD | 5.04 | 674.3 | 21,804 | 118.16 |
4502 | 武田薬品工業 | 4.39 | 4,102.0 | 64,663 | 121.19 |
4544 | H.U.グループHD | 4.26 | 3,365.0 | 1,932 | 104.22 |
2121 | ミクシィ | 4.05 | 2,838.0 | 2,220 | 75.54 |
5857 | アサヒHD | 3.81 | 4,270.0 | 1,702 | 59.15 |
9412 | スカパーJSATHD | 3.73 | 482.0 | 1,432 | 15.30 |
配当利回り平均 | 4.21 | ||||
注:予想配当利回りの単位は%、時価総額の単位は億円、経常利益変化率の単位は%。株価は2021年3月15日終値、単位は円。 |
選定要件
- 予想配当利回りが3.5%以上(3月15日終値ベース)
- 時価総額が1,000億円以上(同)
- コンセンサス経常利益の変化率が3カ月前比で+10%以上
- 3月期本決算
野村HD(8604・東証1部)
▼どんな銘柄?
証券業界で国内最大手の野村證券をはじめ、運用資産約54兆円の野村アセットマネジメント、野村信託銀行などを有する金融グループです。顧客資産残高は約121兆円、野村證券は国内に123店舗を構えています。
リサーチ力にも定評があり、グローバル・リサーチは世界経済・金融指標の86%をカバーしているようです。海外ホールセール部門の収益が全体の半分近くを占めています。
▼業績見通し
10-12月期の税引前利益は1,313億円で前年同期比88%増益、前四半期比でも57%増益と拡大しています。営業部門、アセット・マネジメント部門、ホールセール部門と、主力3セグメントがそろって伸長しました。
第3四半期累計では3,968億円で前年同期比45%増益、2002年3月期以降では最高の利益水準となっているようです。国内外における良好なマーケット環境が追い風となっており、M&A(合併・買収)手数料増加なども貢献しました。
▼ここがポイント
世界的な株式相場上昇の恩恵を最大限に享受できる立ち位置にいます。
高値警戒感によるマーケットの先行きリスクはある程度織り込まれた株価形成になっているとみられ(2022年3月期は減益予想とするアナリストが多い)、世界的な株価の一段の上振れはストレートに買い材料となってくるでしょう。
また、総還元性向を50%以上とする株主還元方針であり、近いタイミングでは自己株式の取得実施などがアナウンスされる余地も大きいでしょう。
武田薬品工業(4502・東証1部)
▼どんな銘柄?
国内製薬業界でのトップ企業となります。がん、希少疾患、神経精神疾患、消化器系疾患の4つの疾患領域に注力しています。
2019年1月、アイルランドの製薬大手シャイアーの買収を完了、買収総額は円換算で約6.2兆円と、日本企業として過去最高額のM&Aとなりました。これにより、事業規模は世界トップ10に仲間入りすることになりました。
▼業績見通し
第3四半期累計営業利益は3,587億円で前年同期比2.2倍ですが、実質的な収益を占めるコア営業利益は7,806億円で同1.5%減益になっています。事業売却の影響や為替のマイナス影響が響きました。
ただ、グローバルブランド14製品の実質成長率が15%増となっているように、安定した実質売上成長が図れています。
なお、OTC事業の売却益が発生することで、会社側の通期営業利益計画4,340億円には大幅な上振れ余地があります。
▼ここがポイント
豊富なパイプラインが注目されます。好酸球性食道炎、デング熱予防、ハンター症候群、非小細胞肺がんなどの治療薬の承認や申請などのイベントが近づいています。開発プログラムのアップデートは4月の上旬にも行われるようです。また、コロナウイルスワクチンに関しても、モデルナ製ワクチンの国内治験を開始しているほか、自社工場でライセンス生産するノババックス開発ワクチンも治験を開始、2021年後半の供給開始を目指しています。
H.U.グループHD(4544・東証1部)
▼どんな銘柄?
臨床検査薬大手の富士レビオと受託臨床検査大手のSRLが統合して2005年に設立、2020年7月にみらかホールディングスから現社名に変更しています。
受託臨床検査、臨床検査薬、減菌関連、日本食品エコロジー研究所やセルフメディケーション・健保事業など新規分野の4つの事業セグメントとなっています。新型コロナウイルスに関して、約2.5万件/日以上の検査受託キャパシティを整備しています。
▼業績見通し
第3四半期決算時に通期業績予想を上方修正しています。営業利益は従来160億~200億円のレンジ予想でしたが、265億円、前期比2.7倍の水準へと増額しています。
国内における新型コロナウイルス感染者数の増加に伴ってPCR検査受託数が増加したこと、高感度抗原定量検査試薬の販売が想定を上回ったこと、海外における高感度抗原定量検査試薬の需要が拡大したことが上振れの背景としています。
なお、10-12月期は過去最高の売上高、営業利益の水準ともなっているようです。
▼ここがポイント
コロナ禍一巡後の業績鈍化懸念が強い状況にありますが、コンセンサスほどには業績が悪化しないとの見方も出てきているようです。
2022年3月期以降に関して、海外からの日本入国者数が増加しそうですが、これに伴って空港での高感度抗原検査の件数が増加するとみられ、業績の上振れ要因となるでしょう。
また、パンデミックの収束後も、健康意識の高まりを受けて抗原検査キットを用いた検査が定着していく余地もありそうです。
ミクシィ(2121・東証1部)
▼どんな銘柄?
スマートデバイス向けゲームを手掛けるデジタルエンターテインメント事業が主力です。中心となるゲームは「モンスターストライク」で、2020年11月には新作「スタースマッシュ」の配信も開始しています。
そのほか、プロスポーツチーム経営などのスポーツ事業、SNS「mixi」などのライフスタイル事業を行っています。エンターテインメント業界におけるDXを推進するファンド「ミクシィエンターテインメントファンド」を2020年10月に設立しました。
▼業績見通し
2021年3月期第3四半期(10-12月期)営業損益は14.1億円の黒字で前年同期8.8億円の赤字から黒字に転じています。前年同期は本社移転費用が発生しており、その費用を除いたベースでも前年同期比77.6%増益となっています。
一方、前四半期比では減収で大幅減益となっています。新作ゲームリリースに向けた外注費の増加、新規サービスの先行投資による販管費の増加も響いています。
▼ここがポイント
現在は、「モンスターストライク」の次のけん引役を見定めるタイミングにあります。ドライバーとして期待されるのはスポーツ事業であり、競輪投票サービス「チャリロト.com」や「TIPSTAR」、競馬情報サイト「netkeiba.com」の利用が進んでいます。
費用先行の時期がいつまでかは定めにくいですが、競馬や競輪ではオンラインを用いた投票が増加傾向にあるため、長期的に恩恵を享受できる余地は大きいとみられます。
スカパーJSATHD(9412・東証1部)
▼どんな銘柄?
2007年に衛星放送事業を展開する「スカパー」と衛星通信事業を展開する「ジェイサット」が経営統合し、共同持ち株会社として設立されました。2008年に衛星通信大手の「宇宙通信」を買収し、現社名へと変更しています。
衛星有料多チャンネル放送「スカパー!」を運営するメディア事業、衛星通信サービスを手掛ける宇宙事業を主力としています。2021年2月期末の段階で、「スカパー!」加入件数は約306万件、1月末の段階で衛星保有数は18機となっています。
▼業績見通し
2021年3月期第3四半期累計営業利益は166億円で前年同期比34.7%増益となっています。メディア事業では、視聴料収入が減少しましたが、コンテンツ費用の減少や減価償却費の減少などコストが抑制されて増益となっています。
宇宙事業においては、2020年4月サービス開始のJCSAT-17(NTTドコモ向け専用衛星)及び2019年1月にサービス開始のHorizons 3eの収益が増加したことなどで増収増益となっています。なお、通期予想は上半期決算時に続く上方修正を発表しています。
▼ここがポイント
宇宙事業の今後の展開力が注目されます。
衛星から取得した画像や位置情報などの地理空間情報と各分野にカスタマイズしたAI分析を組み合わせた情報サービス「Spatio-i」の提供を開始しているほか、衛星データと地図データなどを組み合わせた「総合防災情報サービス」の開発に向けてゼンリンや日本工営と業務提携を行っています。
また、2020年12月には電力中央研究所と「ハイブリッド型太陽光発電出力予測システム」の共同開発に合意しています。さらに、スペースデブリ対策への取り組みなども注目されます。
(佐藤 勝己)
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