FIREを実現する4つの道筋、マネーのライフプランの作り方(その1)
トウシル / 2021年7月6日 7時58分
FIREを実現する4つの道筋、マネーのライフプランの作り方(その1)
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 [動画で解説]FIREを実現する4つの道筋 マネーのライフプランの作り方」
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今日は、最近話題になっているFIREについて、私の考えを書きます。
FIREが関心を集める背景
FIRE(Financial Independence, Retire Early: 経済的に自立して早期退職)が話題になっています。関連する書籍やレポートが幅広く読まれるようになりました。トウシルでも、今月から「FIRE特集」としてレポートが多数掲載される予定です。
FIREが関心を集める背景は、「仕事が人生の中で大きなストレスである」という人が多いという事実です。多くのサラリーマンは、若年・壮年期の多くを仕事をして過ごします。その仕事がストレスだとしたら、人生の大部分をストレスだらけで生きることになります。
もし、生活費を気にしないで良い経済的自立を手に入れられれば、早くいやな仕事を辞めて好きなことだけして生きられるようにしたい、と願うのは自然と思います。
一方、もし自分のやりたい事、好きな事がそのまま生活費を稼ぐ仕事になっていれば、FIREは望まないと思います。そういう人も、一定数います。ただ、多くの人は、「好きなことでは金は稼げない」「生きるためには嫌な仕事をしなければならない」と思っているようです。
どうやってFIREを実現する?
大きく分けて、4つのパターンがあります。どれもハードルは高いですが、それでも実現の見通しが立ちやすいのは【4】だと思います。
【1】一攫千金→貯蓄を切り崩しながら、好きなことだけする
もっとも単純なFIREは、「宝くじで10億円当てて仕事を辞め、好きなことだけして生きる」というパターンです。お金の活用(資産運用)を一切せず、ただ貯金を切り崩していくだけのFIREが実現できます。
ただ、このパターンは、普通の人には真似できません。今、話題になっているFIREは一攫千金に期待するのではなく、普通のサラリーマンがコツコツと貯金して、早期退職の実現を目指すものです。
【2】生活費の25倍の貯蓄をつくり、年率4%で運用しながら生活する
欧米で話題になっているFIREは、「貯蓄から得られる利息・配当金だけで1年間の支出をすべて賄えるようにしてから、早期退職する」というものです。そうすれば、元本を切り崩すことなく、永遠に生計を維持できることになります。
たとえば、生活費が年300万円だったとすると、その25倍の7,500万円を貯蓄してからFIREします。
貯蓄の7,500万円を年率4%で運用すれば、計算上、利息配当金が毎年300万円得られるので、それで元本を切り崩すことなく永遠に生計を維持できることになります。ただしそれは、あくまでも計算上の話です。
これには落とし穴があります。世界的に金利低下が進み、年率4%で安定的に稼ぎ続ける運用は簡単には手に入らないということです。
10年国債の利回りが5%あった時代には、10年国債に投資するだけで税引後年率4%のキャッシュフローが得られました。しかし、今は10年国債の利回りがほぼ0%となってしまいました。運用で安定的に4%を稼ぐというのは、日本ではほとんど夢物語です。
もちろん、適切にリスク管理しながら株式に投資していけば、年率4~5%の運用は可能と私は考えています。ただし、株は元本保証ではないし、短期的に急落・急騰を繰り返します。毎年、安定的に収益が得られるというものではありません。
そのようにリスクのある運用をしながら、年率4%のリターンを得ることを当てにするFIREは、かなり危ういFIREと言わざるを得ません。
【3】生活費がほとんどかからない自由な生活に入る
大金を稼いでFIREするのではなく、「生活費がほとんどかからないライフスタイルに転換」してFIREを実現するという考えが、欧米にはあります。
たとえば、大自然の中の一軒家で自給自足に近い生活をすることで、年間100万円で暮らせるとします。すると、50歳でFIREして100歳まで生きるとしても、100万円×50年分=5,000万円の貯蓄があればまかなえることになります。
ただ、これでもハードルは高いと言えます。50歳で5,000万円の貯蓄を作ることができる人は、ごく少数しかいません。さらに大自然の中の自給自足生活など、そういう暮らしをやったことがない普通の人には無理です。
「都会を離れて生活費の低い自然の美しいところに移る」まではできるかもしれませんが、自給自足まで考えない方が良いかもしれません。
【4】好きな仕事だけやって一定の収入を得ながら、FIRE
一番実現性が高いのがこのパターンだと思います。FIRE後も、仕事はするということです。ただし、自分にとって本当に好きな仕事だけやって収入を得るようにします。嫌な仕事を我慢してストレスを抱えるのではなく、好きな仕事だけやって生きるということです。
多くの人は、「好きな仕事だけやっていても生活できない」と思い、好きな事を仕事にするのを諦めます。ただし、一定の貯蓄があれば、好きな仕事で収入を得ながらFIREすることも可能になることがあります。
たとえば、年間の生活費が300万円だとしても、好きな仕事で年間200万円稼げるならば、差額は100万円だけです。2,000万円貯蓄があれば、とりあえず20年間、生活していくメドが立ちます。
一番気をつけなければならないのは、好きな仕事で本当に年200万円稼げるか慎重にシミュレーションすることです。今の仕事をやめてしまう前に、副業でやってみて、確かな感触をつかんでおく必要があります。
何も仕事をしないFIREは現実的でない
いろいろなFIREが議論されていますが、「宝くじで当てた」「暗号資産で稼いだ」みたいな一攫千金でもない限り、何も仕事をしないFIREは、あまり現実的ではありません。
かなり生活費をしぼっても貯蓄を取り崩すだけの生活では、億に近い貯蓄を作らないと、安心できません。貯蓄から得られる利息収入も、日本のような低金利国では、ほとんど足しになりません。高リスク商品に投資して高いリターンを期待するようなFIREは危険です。
このように考えていくと、もっとも現実的なFIREは、FIRE後も仕事をして、収入を得ていくという選択肢です。「仕事を続けるのなら、何も変わらない」と思ったかもしれませんが、そんなことはありません。大いに違います。生活のために我慢してやる仕事から、自分が本当にやりたい仕事に変わる意義は大きいと思います。
まとめると、「嫌いな仕事から解放され、好きな事を仕事にする」夢を実現するために必要な貯蓄を確保するのを、FIREの目標にするのが、もっとも現実的と思います。
ここまでで、FIREについての私の考えは終わりです。明日、続編として、FIREを考える前に必要なマネーのライフプランの作り方について解説します。
(窪田 真之)
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