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リスクの海に溺れる世界。こんな時は、金(ゴールド)に注目しましょう

トウシル / 2021年8月24日 5時0分

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リスクの海に溺れる世界。こんな時は、金(ゴールド)に注目しましょう

なぜあえて、リスクの数をかぞえなければならないのか?

「リスクの数をかぞえる」…このことは、今世界で起きていることを直視することに他なりません。「見たくないものをあえて見る」と、言い換えることもできるでしょう。

 暗いニュースは見たくない、明るいニュースが見たい、ハラハラせずワクワクしたい…投資家でなくても多くの人は、そう考えていると思います。

 しかし、リスクの数をかぞえなければ、それを一つの材料として動く各種市場を分析することはできません。株式、為替、コモディティ(商品)、暗号資産など、どの市場でもそうです。

 明るくワクワクするニュースだけ(見たいニュースだけ)を探し求めていては、相場の動向を見誤ってしまいます。

 日頃より、相場分析の際に真っ先にするべきことは、市場環境を俯瞰(ふかん)すること(全体をまんべんなく見ること)ですが、今のように、リスクが世界中で同時多発している時は特に、リスクの数をあえて、かぞえることが重要です。

 同時に、リスクの動向が大きな変動要因になり得る金(ゴールド)相場の今後を考えるにあたり、足元、興味深いタイミングに差し掛かっていると筆者は感じています。

 米国で段階的に金融政策を引締めることを指す「テーパリング」の議論が目立ちはじめたことを背景に、複数の専門家は「金相場は下落する」と述べましたが、今月初旬の安値から、大きく反発しているのです。

 本レポートでは、リスクの数をかぞえながら(市場環境を俯瞰しながら)、複数の専門家が下がると述べた金相場が今後、上昇する可能性があることについて、筆者の見解を述べます。

 悲観の中に一縷(いちる)の望みがある、いわば、世界がリスクであふれていても、上昇が期待できる投資商品があるかもしれない、そのような心づもりでお読みいただければ、幸いです。

図:各種銘柄の騰落率(8月9日と20日)

出所:ブルームバーグのデータより筆者作成

図:今、世界はリスクにあふれている

出所:筆者作成

リスクの海に溺れる世界

 アフガニスタンが20年ぶりにタリバンの支配下に置かれました。そして、コロナからの景気回復を先導してくれると期待が高まった中国が、景気回復鈍化にあえいでいます。

 また、昨年春から幅広い市場をかさ上げしてきた米国の金融緩和が、段階的に終わる可能性が高まっています。さらに、デルタ株の拡大が世界経済の回復を阻んでいます。本レポートで扱うリスクは、世界で今、発生している以下の4つです。

図:世界で同時多発する、大きなリスク

出所:筆者作成

 世界で発生するリスクは枚挙にいとまがありません。まさに世界は今、リスクの海に溺れようとしているのかもしれません。

積み上げてきた事態改善に向けた「正のエネルギー」が、各所で吹き飛ぶ

 米国が20年の歳月をかけて、2,000名を超える米兵の尊い命と2兆ドルという莫大(ばくだい)な資金と引き換えに築き上げてきたアフガニスタン(以下、アフガン)の和平への道は、このたった1カ月で閉ざされました。

 そして、世界の景気回復をリードすると期待された中国では、足元、規制強化や教育問題など、景気回復を阻害する要素が続出しています。同時に、足元、他の主要国と同様、デルタ株の拡大に頭を悩ませています。

 また、米国の金融緩和は昨年春から本格化し、株価指数、コモディティ(商品)、暗号資産など、幅広い市場を一様に「かさ上げ」してきましたが、足元では、テーパリング(段階的な金融引締め)の議論が強まっています。このことで、逆に米国の金融政策は、これまでかさ上げされてきた市場の足かせになっています。

 さらに、人類は今まさに、ワクチンという武器を手に、コロナとの戦いに挑んでいますが、デルタ株の感染拡大を前に、いまだ劣勢に立たされています。昨年11月にワクチンを手に入れ、歓喜に沸きましたが、今はそのムードはみじんもありません。

「良くなりそう」。さまざまな事象が改善に向かう際に発生する「正のエネルギー」が各所で積み上がっていましたが、アフガンでも中国でも米国でも、そしてコロナにおいても、こうしたエネルギーはこの数カ月間のうちに、一気に吹き飛んでしまいました。

図:事態の悪化が目立ち、リスクが拡大している

出所:筆者作成

バイデン政権、FRB、あなた方もか!?

 昨年11月にトランプ氏から大統領の座を奪い取ったバイデン氏でしたが、一部の報道では、バイデン氏が、トランプ氏の専売特許だった「米国第一主義」を推し進めていると、ささやかれています。

 アフガンからの撤退は、米国の軍事費縮小、米国国内の世論に配慮、など「米国都合」の要素が強く、それでいて、アフガンやその周辺国であるイラン、中国、ロシアなどのパワーバランスを乱す可能性があり「世界全体のためにならない」と、とらえられているためです。

 また、FBR(米国の中央銀行にあたる)が議論しはじめているテーパリングも、同じような側面があります。テーパリングは、米国の金融政策の正常化に向けた策であるため「米国都合」の要素が強く、それでいて、足元、世界中のさまざまな市場が不安定化していることの一因になっているため「世界全体のためにならない」と、とらえることができます。

「米国第一主義」は昨年の米大統領選挙で、バイデン氏によって完全に否定されました。にもかかわらず、バイデン政権も、そしてFRBも、「その意図はない」「結果として」ではあったとしても、それと同様の意味の策を打ち出しているわけです。

 米国で「米国第一主義」化がじわりと進行していることで、これまで政権交代や金融緩和実施によって事態改善を期待して膨らんだ「正のエネルギー」は、吹き飛んだといってよいでしょう。

図:意図的ではないが、「米国第一主義」が再来か

出所:筆者作成

「可愛さ余って憎さ100倍」。逆転で生じた「負のエネルギー」は膨大に

 リスク拡大が進行し、各所で積み上がっていた「正のエネルギー」が吹き飛んだ例を挙げました。こうした場面で想起されるのは、「可愛さ余って憎さ100倍」という言葉です。

 可愛いという気持ちが大きければ大きいだけ、何かの拍子でいったん憎しみが沸いた時、その憎しみは甚大なものになる、という意味です。

 アフガンでは和平への道ができつつあった、中国は昨年、世界的なコロナからの回復を先導する期待の国だった、金融緩和は各種市場が安定的に上値を切り上げ続けるムードを醸成した、ワクチンがコロナ撲滅を強く期待させた…。振り返れば数カ月前まで、世界は「正のエネルギー」で満ち溢れていたわけです。

 しかし、今はどうでしょうか。アフガンでも中国でも米国でもコロナの分野でも、エネルギーは正から負に転じました。例えて言えば、世界のさまざまなところで「可愛さ」が「憎しみ」へと転じるケースが、発生したわけです。

 可愛さから転じた「憎しみ」が甚大なものになるのであれば、世界のさまざまなところでリスクを振りまく「負のエネルギー」は膨大な規模になり、そしてさらに、それらが束になる可能性があります。このことは、世界規模の「有事のムード」の拡大に他なりません。

図:エネルギーの方向性が逆転

出所:筆者作成

テーパリングの議論が盛んになっても金価格は上昇する可能性がある

 金(ゴールド)市場には、少なくとも6つのテーマが存在すると筆者は考えています。金市場では、各々のテーマ起因の影響力が相殺されながら、連続的に価格が決まっているわけです。

 6つのテーマとは、「有事のムード(資金の逃避先需要)」、「代替通貨(ドルの代わり)」、「代替資産(株の代わり)」、「中国・インドの宝飾需要」、「中央銀行の保有」、そして「鉱山会社の動向」です。

 テーパリングの議論は、「代替通貨」における、金市場に下落圧力をかける材料です。FRBの資産買い入れ額が減少 → 社会に放出される資金の量が減少 → ドルの価値が希薄化する懸念が低下 → ドルを保有する動機が強まる → 金(ゴールド)のドルに対する保有妙味が低下、という連想が働くためです。

 テーパリングの議論が本格化するまでは、この逆の連想が働き、金相場は上値を追いやすい環境にありました。しかし今は、テーパリングの議論が本格化したため、複数のメディアや専門家が、上記のような連想を根拠に金相場が下落する可能性を指摘しています。

 しかし、足元、テーパリングの議論が本格化しても、金相場は反発しています。なぜなのでしょうか? それは、「可愛さ余って憎さ100倍」となった、世界各地で同時に発生している負のエネルギーが束になり、巨大な「有事のムード」を醸成し、資金の逃避先需要を増幅しているためだと、筆者はみています。

図:金市場における6つのテーマ(イメージ)

出所:筆者作成

 不確定要素は多々あるものの、「有事のムード」が拡大し、テーパリングによる「代替通貨」起因の下落圧力を相殺して余りある上昇圧力が巻き起これば、短期的には、ドル建てで1,900ドル/トロイオンス、円建てで6,800円/グラムに到達する可能性はあると、筆者は考えています。

図:NY金先物価格の推移 単位:ドル/トロイオンス

出所:筆者作成

 材料を俯瞰すること、そして複数のリスクを直視すること。この2つの動作を深めるとき、テーパリングでも金(ゴールド)相場が上昇する可能性が浮かび上がります。本レポートが、みなさまのお役に立てば、幸いです。

 [参考]貴金属関連の具体的な投資商品例

 楽天証券の純金積立「金・プラチナ取引」はこちらからご参照ください。

純金積立

金(プラチナ、銀もあり)

国内ETF/ETN

1326 SPDRゴールド・シェア
1328 金価格連動型上場投資信託
1540 純金上場信託(現物国内保管型)
2036 NEXT NOTES 日経・TOCOM金ダブル・ブルETN
2037 NEXT NOTES 日経・TOCOM金ベアETN

海外ETF

GLDM SPDRゴールド・ミニシェアーズ・トラスト
IAU iシェアーズ・ゴールド・トラスト
GDX ヴァンエック・ベクトル・金鉱株ETF

投資信託

ステートストリート・ゴールドファンド(為替ヘッジあり)
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)
三菱UFJ純金ファンド

外国株

ABX Barrick Gold:バリック・ゴールド
AU AngloGold:アングロゴールド・アシャンティ
AEM Agnico Eagle Mines:アグニコ・イーグル・マインズ
FNV フランコ・ネバダ
GFI Gold Fields:ゴールド・フィールズ

国内商品先物

金・金ミニ・金スポット・白金・白金ミニ・白金スポット・銀・パラジウム

海外商品先物

金、ミニ金、マイクロ金(銀、ミニ銀もあり)

商品CFD(金・銀)

(吉田 哲)

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