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2025年は「読書と料理」で投資効率を上げる

トウシル / 2025年1月7日 7時30分

2025年は「読書と料理」で投資効率を上げる

2025年は「読書と料理」で投資効率を上げる

※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の吉田 哲が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
2025年は「読書と料理」で投資効率を上げる

「トランプ2.0」とともに始まる2025年

 いよいよ1月20日、トランプ氏が米大統領に就任し、トランプ政権2期目を意味するトランプ2.0がスタートします。2025年の始まりはトランプ2.0の始まりでもあります。

 トランプ2.0が始まることによって、急低下する可能性がある指数があります。V-Dem研究所(スウェーデン)が公表している米国の自由民主主義指数です。

 法整備、裁判制度、言論の自由など、民主主義に関わる多数の情報を数値化したこの指数は0と1の間で決定し、0に接近すればするほど、その国が自由で民主的な度合いが低いことを、1に接近すればするほど自由で民主的な度合いが高いことを意味します。

図:米国の自由民主主義指数

米国の自由民主主義指数
出所:V-Dem研究所(スウェーデン)のデータより筆者作成

 上の図のとおり、東西冷戦のさなか、米国は旧ソ連や旧ソ連と考え方を同じくする国々と明確に異なる、自由で民主的な姿勢を強めました。2001年に同時多発テロ発生をきっかけとした混乱によって一時的に低下したものの、その後は反発して0.85近辺に達し、米国が世界屈指の自由で民主的な国であることが示されました。

 しかし、2016年にトランプ氏が米大統領選挙で勝利した後、0.72近辺まで急低下しました。彼の勝利は、民主主義の対局にある分断を利用したものだったといわれています。この急低下は、彼の横暴ぶりが米国の民主主義を大きく傷つけたことを示唆しています。

 そして今、トランプ2.0が始まり、再び同指数が急低下する可能性が高まっています。以下の図のとおり、西側の超大国である米国の民主主義の行き詰まりは、2010年ごろから続く、世界全体の民主主義の停滞、ひいては世界分裂を加速させる可能性があります。

図:2010年ごろ以降の世界分断発生とコモディティ(国際商品)価格上昇の背景

2010年ごろ以降の世界分断発生とコモディティ(国際商品)価格上昇の背景
出所:筆者作成 イラストはPIXTA

 世界分裂は戦争を激化させたり、非西側の資源国の出し渋りを拡大させたりするおそれがあります。戦争激化は有事ムード拡大を、資源の出し渋り拡大はインフレ拡大の要因になり得ます。こうした傾向が強まる1年目が2025年であると、考えられます。

金(ゴールド):上昇予想、投資機会続く

 2024年の金(ゴールド)相場は、歴史的高値に達する急騰劇を演じました。海外の金(ゴールド)相場は前年末比で最大およそ35%、国内は44%、上昇しました。また、2024年は国内外の主要な株価指数が歴史的高値を更新した年でもありました。

 歴史的な高値水準で「株高・金(ゴールド)高」が実現したのは、以下のとおり、株高の局面でも金(ゴールド)相場を上昇させる圧力が存在したためです。

図:金(ゴールド)市場を取り巻く環境(2024年)

金(ゴールド)市場を取り巻く環境(2024年)
出所:筆者作成

 株高が目立って「代替資産(株の代わり)」起因の下落圧力が強まる局面でも、ウクライナ・中東情勢の悪化がきっかけで「有事ムード(資金の逃避先需要)」が強まったり、米国の利下げ観測によってドル安観測が浮上して「代替通貨(ドルの代わり)」起因の上昇圧力が強まったりして、金(ゴールド)相場は上昇しました。

 また、こうした短中期視点の材料がもたらす上下の圧力だけでなく、中長期視点の材料である、金(ゴールド)の全需要のおよそ20%を超える需要(2023年)を担う中央銀行の買いが続いたこと、超長期視点の材料で2025年の全体観に関わる世界分裂やSNS・ESGをきっかけとした混乱を言い換えた「見えないジレンマ」が底流したことも、上昇圧力をもたらしました。

 2024年の金(ゴールド)相場は、過去の常識(株と金(ゴールド)は逆相関)をものともせず、力強い上昇を演じました。2025年もこうした環境が続くと筆者は考えています。

 しばしば発生が予想される、株高をきっかけとした「代替資産」関連の下落圧力と、ドル高をきっかけとした「代替通貨」関連の下落圧力を受け、短期的に上下する場面はありながらも、全体的には上値を切り上げると、筆者はみています。

図:2025年の金(ゴールド)相場の見通し(2025年1月6日時点)

2025年の金(ゴールド)相場の見通し(2025年1月6日時点)
出所:LBMAおよび国内地金大手のデータを基に筆者作成

 2025年年末時点で、海外金(ゴールド)現物価格は1トロイオンス当たり3,000ドルに、国内地金大手小売価格は1グラム当たり1万6,000円(大阪の先物価格は1万4,500円)に到達していると考えています。

プラチナ:低位安定、積立投資の好機続く

 近年のプラチナ相場は、1トロイオンス当たり1,000ドルを挟んだプラスマイナス250ドル程度のレンジ内で推移しています。レンジ相場は、相場が上昇圧力によって形成された下値の目安と、下落圧力によって形成された上値の目安の間で推移している状態のことです。つまり近年のプラチナ相場は、上下の圧力に挟まれて推移しているのです。

 下値の目安である750ドルは、リーマンショック(2008年9月)直後以降、長期視点で維持している安値水準です。上値の目安である1,250ドルは、2021年序盤にコロナショック発生後に行われた大規模な金融緩和時に一時的につけた高値水準です。

 リーマンショック発生直前は2,000ドル近辺でした。この水準に比べると、近年のレンジの中心である1,000ドルはおよそ2分の1です。このため、近年のプラチナ相場は、長期視点の安値水準で推移しているといえます。

 足元、プラチナ相場のレンジ形成を促している上下の圧力は、以下のとおりです。

 下限を形成する上昇圧力は、短中期的には「主要国の景気楽観論」「金(ゴールド)相場の動向」など、中長期的には「フォルクスワーゲン問題関連」、上限を形成する下落圧力は、短中期的には「主要国の景気悲観論」「金(ゴールド)相場の動向」、中長期的には「フォルクスワーゲン問題関連」がもたらしていると、考えられます。

図:プラチナ市場を取り巻く環境(2024年)

プラチナ市場を取り巻く環境(2024年)
出所:筆者作成

 複数のテーマが同時進行していること、それらがもたらす圧力が相殺されて価格が形成されていること、同じテーマでも正反対の圧力を生む場合があること、などに留意する必要があります。

 フォルクスワーゲン問題発覚を期に、「もうダメだ!」と多くの市場関係者が強く否定し、諦めムードが漂いはじめた2015年から、2025年で10年目を迎えました。すでに足元、自動車排ガス浄化装置向け需要は2015年の水準にほぼ回復しているため、呪縛におびえる必要はなくなったと言えます。

 2025年のプラチナ相場については、短中期的には「主要国の景気動向」や「金(ゴールド)相場の動向」がもたらす上下の圧力を受けながら、それらのバランスに応じて細かく上下する展開が予想されます。

図:2025年のプラチナ相場の見通し(2025年1月6日時点)

2025年のプラチナ相場の見通し(2025年1月6日時点)
出所:世界銀行および国内地金大手のデータを基に筆者作成

 中長期的には「フォルクスワーゲン問題」の呪縛から解放されつつあることを受け、底値を切り上げる可能性があります。超長期的なテーマである水素関連の新需要増加や、2025年の全体観に関わる世界分裂をきっかけとした出し渋り起因の主要鉱山生産国からの供給減少が目立てば、なおのこと、底値切り上げが目立つ可能性があります。

 2025年は、超長期視点でとらえれば「積立取引」を開始するタイミングであると言えるでしょう。足元の価格水準が自分自身の過去の高値や、金(ゴールド)に比べて圧倒的に安く、それでいてしばらく現在の水準を維持する可能性があり、超長期視点で見て価格上昇が起きそう、という条件はまさに、積立投資の効率を最大化させる要因だからです。

原油:高止まり、インフレを投資機会へ

 2024年のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油相場は、高値こそ前年の90ドル台に届かなかったものの、数年にわたって続いている80ドルを挟んだプラスマイナス15ドル程度のレンジ内に収まりました。

 このレンジの水準は、長期視点で見れば「高い」といえます。2000年代前半に付けていた30ドル台や2015年ごろの40ドル台に比べると、はるかに高いためです。

 この意味では、近年の原油相場は「長期視点の高止まり」状態にあるといえます。世界でまん延するインフレがなかなかなくならないのはこのためです。足元、原油相場のレンジ形成を促している上下の圧力は、以下のとおりです。

図:原油市場を取り巻く環境(2024年)

原油市場を取り巻く環境(2024年)
出所:筆者作成

 下限を形成する上昇圧力は「産油国での戦争」「OPECプラス(石油輸出国機構12カ国と非加盟の産油国10カ国で構成)の生産動向」「トランプ政権への思惑」「米国の金融政策」など、上限を形成する下落圧力は「OPECプラスの生産動向」「トランプ政権への思惑」「中国悲観論」などです。

 筆者は2025年も、こうした環境が継続すると考えています。2025年のWTI原油先物は、基本的には80ドルを挟んだプラスマイナス15ドル程度(想定レンジ:65~95ドル)、突発的な事象の影響を受けた瞬間的な上下を考慮するとプラスマイナス20ドル程度(想定レンジ:60~100ドル)の値動きになると、現時点で考えています。

図:2025年のNY原油先物相場(月足 終値)の見通し(2025年1月6日時点) 単位:ドル/バレル

2025年のNY原油先物相場(月足 終値)の見通し(2025年1月6日時点) 単位:ドル/バレル
出所:Investing.comのデータより筆者作成

2025年は読書と料理で投資効率を上げる

 冒頭で述べたとおり、2025年はトランプ2.0のスタートの年です。以下のとおり、トランプ2.0環境下では、同じテーマでも正反対の意味を持つ、明(喜)と暗(悲)が同時に創出され、これまで以上に、材料を点で見ることが許されなくなることが予想されます。

 また、本レポート内で個別に材料を確認したとおり、金(ゴールド)、プラチナ、原油、いずれも、2024年と同様、上下両方の圧力が同時に発生し得ます。この点からも、分析の際、材料を点で見てはいけないことが分かります。

図:トランプ2.0環境下の「全体観」

トランプ2.0環境下の「全体観」
出所:筆者作成

 例えば2024年8月初旬、米国の主要株価指数と金(ゴールド)相場が同時に下落しました。代替資産(株の代わり)起因の上昇圧力がかかったものの、代替通貨(ドルの代わり)起因の下落圧力が勝ったためです。

 この時、過去の常識(株と金(ゴールド)は逆相関)にとらわれず、複数の材料起因の圧力を同時に認識することができれば、簡単に値動きを説明することができました。「全体観」を意識できたかどうかが、分析精度を左右する、大きな(大きな)ポイントでした。悲喜こもごもの2025年は、全体観への意識がさらに重要になると考えられます。

 個人投資家を含む市場関係者は、材料を認識する際、複数をつなぎ合わせて線や面にしなければなりません。頭の中の空間を拡張することが求められているのです。こうしたことを実現することは、以下で示す「ラーニングゾーン」に移行することと、同じ意味です。

 ラーニングゾーンに移行するための方法については、世界中で研究が行われていますが、筆者が考える最も簡単な方法は「読書」と「料理」です。読書は頭の中に自由に無限の絵を描く機会です。料理は目に見えないさまざまな事象を頭の中で掛け合わせ、味をまとめ上げる機会です。頭の中の空間を拡張し、全体観を意識する訓練にうってつけです。

 2025年、市場関係者が投資効率を上げるためにとるべき行動は、読書と料理だと筆者は確信しています。生きる術をも増強し得るこれらは、転職と異なりすぐにでき、リスキリングに比べて各段に少額でできます。ぜひ、積極的に行ってみてください。

図:トランプ2.0に対応する「ゾーン」

トランプ2.0に対応する「ゾーン」
出所:各種資料より筆者作成

[参考]積み立てができる貴金属関連商品例

純金積立(当社ではクレジットカード決済で購入可能)

純金積立・スポット購入

投資信託(以下はNISA成長投資枠対応)

ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)
三菱UFJ 純金ファンド
ゴールド・ファンド(為替ヘッジなし)

(吉田 哲)

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