外国人が日本酒の「獺祭」こぞって買い求める背景 ニューヨーク・ヤンキースのスポンサーにも
東洋経済オンライン / 2023年11月29日 14時0分
3代目の桜井博志氏(現会長)が社長だった頃から、旭酒造はチャレンジ精神が旺盛で、手を替え品を替え、いろいろなことを試してきた。うまくいかなかったこともたくさんあるが、ダメならすぐに決断して引き下がり、また別のことにトライする。お金も人もないので、早く見切る必要があった。
そうしていくうちに、やってきたことが奏功し、結果に結びついたという。そのことが下地となり、つねに新しいことを考え、「さまざまなことをやっていかなければいけない」という意識になったそうだ。
人との縁でコラボも次々と実現
ただ、新しいことに挑戦するといっても、企画案ができなければ何もできない。アイデアの源はどこにあるのだろうか。
「さまざまな人たちとの交流からアイデアが生まれることが多いです。社員はもちろん、日本酒の会に参加した方などから話を聞いて新しい取り組みを始めることもあります」(桜井氏)
獺祭はさまざまな企業とも、コラボレーションをしている。冒頭で述べたジョエル・ロブションとのコラボもその一例だ。
コラボレーションは、人の縁からつながったものが多いという。「獺祭 ジョエル・ロブション」のオープンでは、人を介してロブション氏から打診を受けた。実際に会ってみたところ、モノづくりに対する姿勢で互いに共感できるものがあったという。
また、ヤンキースとスポンサーを契約した際には、ヤンキー・スタジアムで「獺祭」を出さないかと紹介してくれた人物がいた。球団の上層部に「獺祭」を愛飲していた幹部がいて話が進んだ。
高付加価値戦略と、人との縁が重なり、海外で広く受け入れられている獺祭。そんな旭酒造が今、力を入れていることは何か。
「海外で日本酒が人気になっているといっても、アルコール市場でいえば、アメリカでは全体の0.2%、ヨーロッパでは全体の0.1%以下と、浸透しているとはまだいえません。新しい市場を開拓し、さらに促進していくには、世界のビジネスマンが集まり、情報の発信地となっているニューヨークが非常に重要です。そのため現在は『DASSAI BLUE』に全力で取り組んでいます」(桜井氏)
アメリカ市場の中でも、ニューヨークのマンハッタンには特に注力している。ここでは卸売りは通さず、旭酒造が自ら営業に取り組む。その理由は、日本酒の品質管理と市場理解だ。日本酒を管理するにはマイナス5度が最適な温度。しかし、ワインの物流では常温で管理しているところもあり、10度以下であればよいほうだ。そこに直接目配りする形を取りたかったという。
アメリカで成功しなければ未来が見えない
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