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外国人が日本酒の「獺祭」こぞって買い求める背景 ニューヨーク・ヤンキースのスポンサーにも

東洋経済オンライン / 2023年11月29日 14時0分

また、卸売りを挟むと、何がどのようにして売れたのか、もしくは、売れなかったのか、詳しく知ることができない。飲食店やワインストアを回ることによって、生きた情報を早くキャッチすることができ、よりよい戦略を練ることができるのだ。

「アメリカで成功しなければ、未来が見えてきません。ニューヨークに構えた酒蔵では、最大で日本の5分の1くらいは生産できる能力があります。10年後くらいには、それくらいまで伸ばしていきたいです。アルコールもタバコと同じように、世界的に市場が縮小して淘汰されていき、よいお酒だけが残ると考えています。生き残るのは簡単ではありませんが、大吟醸の素晴らしさを広め、市場を育ててきたという自負もあるので、みんなで乗り切りたいです」(桜井氏)

海外市場で戦ううえで、桜井氏は日本酒の魅力は3つあるという。それは、文化的、機能的、品質的な価値だ。日本酒が、米と水が豊かな日本で生まれ、祭りや冠婚葬祭の場で提供されてきたという文化。酔うことでリラックスすることができ、人との交流がスムーズになるという側面。そして、“おいしい”という品質的な価値だ。

「海外のジャーナリストから、酸がある日本酒を造った方が、料理とペアリングするといわれたことがあります。しかし、日本酒、少なくとも『獺祭』とワインでは同じ料理に対しても合わせ方が違います。

たとえば、ワインは料理の味わいを切る役割を果たしますが、日本酒は料理と混ざり合いながら一体となって消えていくものです。こういった意見が聞かれるのも、日本酒の魅力をまだ伝えきれていないからかもしれません。最高の日本酒を造って広めていきたいので、成功も失敗も含めて、みなさまに応援していただけると嬉しいです」(桜井氏)

競合や他ジャンルとの競争も激しい

桜井氏の志は大きいが、獺祭を広めていくうえで、何か課題はあるだろうか。私は3つのポイントがあると考えている。

1つ目はノンアルコールドリンクとの競争だ。コロナ禍でモクテルなどノンアルコールが躍進した。“お酒を飲めるがあえて飲まない”ソバーキュリアスも増えているだけに、ノンアルコールドリンクは強敵だ。お酒の素晴らしさ、「獺祭」のおいしさを伝えられるかがカギだ。

2つ目は桜井氏も言及したように外国人の理解だ。日本酒も料理とのペアリングにマッチすることを啓蒙していき、ファインダイニング(高級レストラン)での消費も伸ばす必要があるだろう。それには、世界各地で行っている「獺祭の会」の役割や「アジアのベストレストラン50」での存在感がますます重要となる。

そして最後は他の日本酒との競争。酒造メーカーはこれまで海外市場に消極的だったが、旭酒造の成功を目の当たりにして、海外に力を入れ始めている。

同じマーケットの中でシェアを奪い合うことになるが、日本酒市場が拡大していけば問題ない。それには、日本酒業界が一体となって、海外で訴求していくことが必要だ。

先に述べた海外で注力する「DASSAI BLUE」のコンセプトは「青は藍より出でて藍より青し」に由来しており、「日本で造られるオリジナルの獺祭を超える」という想いが込められている。桜井氏の想いを乗せた「獺祭」の佳味が世界を席巻する日を楽しみにしたい。

東龍:グルメジャーナリスト

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