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利用者4.8倍増!笑顔を生む手指消毒器の秘密 つい試したくなる仕掛けはこうして生まれた

東洋経済オンライン / 2023年11月30日 9時0分

そのときに手指消毒をしてもらうための仕掛けとして、ライオンの口型手指消毒器(勇気の口)を当時のゼミ生たちと設置した。このライオンは口が大きく開き、怖い顔をしている。イタリアのローマにある「真実の口」を知っている人にはそれを想起するように作られている。

真実の口には、うそつきの人が手を入れると手が抜けなくなったり切り落とされたりするという都市伝説がある。それを知らなくても、映画『ローマの休日』を観たことのある人なら、新聞記者がアン王女(オードリー・ヘップバーン)を驚かそうと真実の口に手を入れて抜けないふりをするというシーンを思い出すだろう。これらを知っている人は、ライオンの口を見るとつい手を入れてみたくなる。ライオンの口の中にはセンサー式の手指消毒器が仕込んであるので、手にアルコール消毒液がかかり、結果的に手がきれいになる。

真実の口を知らない人はとまどうかもしれないが、勇気の口に手を入れている人を見れば使い方を知ることができる。また、「勇気の口」と書かれた紙も貼っているので、口に手を入れる勇気が試されていることが伝わるようにもなっている。

2016年9月10日(土)、11日(日)にライオンの口型手指消毒器および普通の手指消毒器を3時間ずつ設置して利用人数を計測したところ、ライオンの口型手指消毒器は215名(大人101名、子供114名)、普通の手指消毒器は45名(大人18名、子供27名)であった。同じ手指消毒器を用いたが、ライオンの口の中に入れるだけで利用者数が4.8倍になった。

なお、不意にアルコール消毒液が噴霧されるので多くの人は驚いて叫んだりするが、その後は笑い出す、という状況がよくみられた。仕掛けは利用人数だけでなく、利用者が笑顔になるかどうかも重要な評価指標になることに気づかせてくれた実験であった。

試食投票

試食を用意しても、意外と試してもらえない。なにかしらの施しを受けるとお返しをしないと申し訳ないと思う返報性の原理が働くが、パン屋さんだとお返しをする手段がパンの購入しかなく、それが心理的な抵抗になるのだと考えられる。

気軽にお返しができる手段があれば心理的な抵抗を下げることができ、試食へのハードルが下がるはずである。そこで、2種類の試食のパンの前に「あなたはどっち派? 人気投票!」の札を立て、試食で使用した爪楊枝を使って投票できる試食投票を当時のゼミ生たちと考案した。アンケートに答えることがお返しになり、返報性の原理が満たされることを期待した。

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