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「スイスは時計とチョコしか作れない」の大誤解 日本人が知らない「スイスの製造業の正体」

東洋経済オンライン / 2023年11月30日 10時0分

「日本人が知らないスイスの製造業の実態」をご紹介します(写真:guni/PIXTA)

スイスという国についてどんなイメージをお持ちだろうか。永世中立国で富裕層向けの金融や観光業などが中心だと思っている人が多いのではないだろうか。そしてスイスの製造業といえば、せいぜい「高級時計」と「高級チョコレート」くらいしか思い浮かばない人もいるだろう。しかし、それは本当のスイスの姿なのだろうか。

ベストセラー『世界経済を破綻させる23の嘘』などの著書がある経済学者のハジュン・チャン氏の最新刊『経済学レシピ:食いしん坊経済学者がオクラを食べながら資本主義と自由を考えた』から、「日本人が知らないスイスの製造業の実態」について一部抜粋・編集のうえお届けする。

チョコレート大国スイスの正体

多くの人から、スイスで生産されているのは高級チョコレートだけ、そのほかにはせいぜい、超高級腕時計(新興財閥の創業者か、銀行家か、スポーツのスター選手くらいしか買えない腕時計)があるだけだと思われている。ものをほとんど作らず、もっぱらサービス業で生きている国というのが、世界に広まっているスイスのイメージだ。

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これは悪くいえば、スイスは第三世界の独裁者から預かったブラックマネーを秘密の口座で管理し、鳩時計とカウベルのような安っぽい土産物(最近はきっとそれもすべて中国製だろう)をお人好しの米国人や日本人の観光客に売ることで生計を立てている国ということになる。

よくいえば(こちらのほうがいわれることが多いが)、製造業ではなく金融や高級志向の観光といったサービス業で繁栄するスイスは、脱工業化経済のお手本ということになる。

1970年代に登場した脱工業化論の出発点をなしているのは、人々は裕福になるにつれ、より洗練されたものを欲するようになるという単純ながら説得力のある考えだ。ひとたび人々の腹が満たされると、農業は衰退する。

服や家具など、ほかの基本的なニーズが満たされれば、電気製品や自動車など、さらに洗練された消費財が求められるようになる。世の中の大多数の人がそれらを手に入れると、消費者の需要はサービスへと向かう。外食、演劇、旅行、金融商品といったものだ。この時点から、工業は衰退し始め、それに代わってサービス業が経済の主役になる。ここに脱工業化時代が始まる。

この脱工業化論が勢いづいたのは、世界じゅうの富裕国で、生産高と雇用の両面で、製造業の重要性が薄れ、サービス業の重要性が高まった1990年代だった。

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