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シュンペーターは一体何を間違えてしまったのか 新しい「経済社会の"変遷"理論」を提示する

東洋経済オンライン / 2023年12月2日 8時30分

2007年1月にお目見えしたアップルのiPhone。20世紀に大活躍したシュンペーターは何を間違っていたのだろうか(写真:AP/アフロ)

前回の「日本は『独り勝ち』のチャンスを台なしにしている」(11月11日配信)に続き、経済学者ヨーゼフ・シュンペーターを取り上げる。

ひとことで言うと、シュンペーターの理論は、古く、不十分で、そして誤りだった。今回は、この3点を補う新しい理論を提案したい。

シュンペーター理論のどこが古いのか

彼の「経済発展の理論」と「景気循環論」を21世紀の理論に更新し、彼の理論に欠けていた残りの半分を補い、そして、発展理論でも循環理論でもない、新しい「経済社会の"変遷"理論」を提示する。

分不相応にもほどがあるし、そしてまだ稚拙で荒い試論だが、この週末、時間のある方はお付き合いいただきたい。この連載では、前々回の「崩壊している資本主義の後に来るものは何なのか」(10月21日配信)と合わせ、3部作の最終部分となる。

まず、シュンペーターの理論のどこが古いのか。それは資本主義が衰退する理由が独占大企業と官僚主義にあるとしたが、誤りだったからだ。

経済全体を独占大企業が支配し、覇者の交代による経済発展という推進力が失われ、大企業内部では官僚主義が横行し、独占企業組織内部からも革新、新結合という経済を動かす活力の源泉が生まれなくなる、というシナリオが資本主義を衰退させると彼はみていた。

だが実際には、20世紀後半には新しい企業群が生まれ、重厚長大産業を支配する超巨大独占企業に取って代わり、経済を支配するようになった。軽薄短小な製品を次々生み出し、20世紀末にはコンピューター化、サービス産業化が進展し、21世紀はさらに新しい独占企業群が生まれた。経済はバブル化し、華やかさはさらにあふれんばかりとなり、一見活力にあふれる経済が加速したからである。

シュンペーターの理論に「半分」欠けていた消費者

では、シュンペーターの理論に何が欠けていたから、20世紀前半に生きた彼は21世紀の変化を見抜けなかったのだろうか。それは、大衆消費社会の経済への構造的な影響であり、消費者軽視であり、消費者と生産者のダイナミズムによる経済社会の変遷である。これがシュンペーター体系の不十分な点であり、3つのうちの2つ目の論点である。

シュンペーターの言う経済発展は、企業家が新結合による革新を企図し、それを銀行家が資本の提供で実現させることによる、生産独占者の覇権の交代の実現により進む。そして、これらはすべて生産者側の世界で完結する。そこには消費者は出てこない。

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