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リニア「水資源」保全問題で宙に浮く田代ダム案 生態系という難癖を突き付けた静岡・川勝知事

東洋経済オンライン / 2023年12月9日 7時30分

11月28日の記者会見で新たな課題を持ち出した川勝知事(静岡県庁、撮影:小林一哉)

静岡県の川勝平太知事は11月28日の会見で、リニア中央新幹線について水資源保全の解決策「田代ダム案」を”条件付きで容認”した。川勝知事が田代ダム案に容認姿勢を示したことで、ほとんどのメディアは、最大の懸案だった「水問題の解決に向けて大きく前進する」と勘違いし、そのまま記事にしてしまった。

【写真】焦点となっている「田代ダム」。このダムからの取水を抑制する

だが実際は、田代ダム案を高く評価する流域市町などの強い姿勢に対し、静岡県が抗することができなくなったため、表面的に、田代ダム案を容認する姿勢を見せかけただけである。

川勝知事は田代ダム案そのものを実施できないよう、新たな難癖をJR東海に押しつけたのだ。

「田代ダム案」が出てくるまでの背景

結局、水資源保全の解決策だった田代ダム案は宙に浮き、リニア問題の解決にはさらなるムダな時間ばかり要することになった。

いったい、何があったのか?

田代ダム案とは、川勝知事の「県境付近の工事中の湧き水全量を戻せ」に応えるという、リニア問題の水資源保全の解決策である。

JR東海としては、南アルプス断層帯が続く静岡━山梨県境付近で、静岡県側から下り勾配で掘削すると、突発湧き水が起きた場合、水没の可能性が高く、作業員の生命に危険が及ぶことを懸念して、山梨県側から上り勾配で掘削すると説明してきた。

約10カ月間の県境付近における山梨県側からの掘削で、まったく対策を取らなければ、最大500万立方メートルの湧水が静岡県側から流出すると推計した。この県外流出について、国の有識者会議は「大井川下流域の水資源にまったく影響はない」との結論を出している。

ところが、川勝知事は「静岡県の水は一滴も県外に流出させない」「湧水全量戻しができなければ、工事の中止が約束だ」と、JR東海を脅した。

このためJR東海は2022年4月、東京電力グループの東京電力リニューアブルパワー(RP)に田代ダムの取水抑制をしてもらい、最大500万立方メートルの水を静岡県内に戻す、「田代ダム案」を提案した。

川勝知事による河川法違反の疑いを持ち出した妨害が続く中、JR東海は東電RPとの詰めの協議に入り、今年9月末から、田代ダム案の具体的な実施策を流域市町など利水関係者へ説明して大筋の了解を得た。この結果、10月25日に大井川利水関係協議会(利水協議会)を開催し、正式に利水者の合意を得る手続きを進めるよう、静岡県に要請したのである。

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