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医師会VS財務省「診療所の良好な経営」巡る対立 私たちの日々の暮らしにどう影響を及ぼすか

東洋経済オンライン / 2023年12月12日 7時30分

診療報酬は2年に1回改定され、今議論されているのは、「来年4月からの診療報酬がどれくらいになるか」という部分となる。どれくらいのプラスになるか(マイナスになるか)は、病院運営に携わる人たち(開業医など)にとって非常に大きな関心事なのだ。

マイナス改定で国民の負担を抑えたい

財政審の建議では、診療報酬がプラスマイナスゼロ改定でも、高齢化による医療の需要が増えることなどで、医療費は8800億円(うち健康保険料分は4400億円)が自然増となるとしている(以下の図)。※外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください

財政学を専門とする慶應義塾大学経済学部の土居丈朗教授は、「自然増の分だけ国民の負担が増える。その増額分を診療報酬のマイナス改定で抑えたいというのが、財政審の考え」と述べる。

診療報酬の項目は膨大で、それぞれの項目についてプラス改定されたり、マイナス改定されたりする。最終的にはトータルでプラス改定なのか、マイナス改定なのかという話になるが、今回、そのマイナス改定の項目に挙がったのが、診療所の「極めて良好な経営状態」(建議)だった。

実際、財務省財務局が実施した機動的調査からは、2022年度の診療所の経営利益率(平均)は8.8%で、中小病院の利益率(同)は4.3%という実態が明らかになった。

財務省はこれを根拠に、国民の負担を極力抑制するため、診療所の経常利益率8.8%を、全産業やサービス産業の平均である3.1~3.4%と同等にするため、診療所の診療報酬を5.5%程度引き下げる必要があるとした。

なぜ今回、財務省は診療所の経常利益率に目をつけたのか。その背景にはコロナ禍の医療費の問題が挙げられると、土居教授は言う。

「財務省も公表していますが、コロナ禍で特例的な支援で医療提供体制の強化のために21兆円が投じられたにもかかわらず、診療所で診てもらえない発熱患者が増えていた。このコロナ対応の初動が遅かったなど、診療所に対しては不満があった」

機動的調査で診療所の経営実態を調べる

そこで財務省財務局が行ったのが「機動的調査」だった。

機動的調査は、財務省と全国の財務局などにいる職員らが、各都道府県に医療機関から届け出た事業報告書等を基に、3事業年度分の医療機関の経営状態を調べ上げた、まさに財務省財務局職員の機動力にものを言わせた調査だ。その数は38都道府県、2万1939施設にのぼる。

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