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富士通が手放す新光電工「半導体後工程」での実力 高性能半導体で「先端パッケージング」に脚光

東洋経済オンライン / 2023年12月15日 7時30分

岐阜県に本社を置くイビデンと並び、フリップチップでは世界でトップ級のポジションにある。

業績は厳しいが強気の設備投資

新光電工の業績は、2010年代を通じて売上高1400億円前後、純利益は数十億円規模で推移し停滞。2006年度に任天堂の「Wii」やソニーの「PlayStation 3」のヒットによってたたき出した、192億円という最高純益に遠く及ばない時期が続いた。

だが、コロナ禍での巣ごもりを受けたパソコン特需やサーバー投資の増大で、業績は一気に急拡大。2021年度以降の2年は純利益が500億円超と、2006年度の最高益を凌駕する好業績を謳歌した。

2023年度はそのコロナ特需の反動で減収減益を見込むものの、将来需要を見据えた設備投資の姿勢はあくまで強気だ。

計画している設備投資額は売上高の33%に当たる764億円。当初予定していた1135億円から引き下げたが、それでも前年度比でおよそ3倍という水準だ。

この11月には長野県千曲市で建設していた高性能半導体向けパッケージ基板の新工場が竣工、来年度から稼働が始まる見込みだ。同工場ではさらに533億円を投じて新棟を追加建設することを決めており、経済産業省から178億円の補助を受けることになっている。

投資攻勢を続けられるのは、高性能半導体の分野で今後、パッケージ基板の需要がさらに高まっていくのはほぼ間違いないと見られているからだ。

これまで、半導体の性能向上はシリコンウェハー上へ回路をどれだけ微細に描けるかを突き詰める「前工程」のプロセスが主導して進んできた。一方で「後工程」と呼ばれる、出来上がったチップを加工し電子機器へ実装するプロセスは軽視されてきた。

だがここ数年、前工程での微細化には物理的な限界が見え始め、微細化を進めるコストに性能向上が見合わなくなってきている。

先端パッケージングの重要部品

そこで注目が集まっているのが、後工程を工夫することによる半導体の性能向上だ。

たとえば、複数の半導体チップをこれまでよりも効率的に接続し性能向上を図る「チップレット」。そこでパッケージ基板は、複数のチップを接続する際の土台のような役割を果たす。業界内では「先端パッケージング」と呼ばれ、AI半導体などで使われるようになっている。

AI処理を担うデータセンターへの投資拡大は追い風だ。生成AIの爆発的なヒットで高性能な半導体の需要が急増しており、強みであるサーバー向けのパッケージ基板の必要性も高まっている。

同じくパソコンやサーバーなど高性能半導体向けのパッケージ基板を手がけている競合のイビデンは、基板需要が2027年に2022年比で1.4倍になると見込んでいる。

今回、買収のために新たに設立される会社には、JICのほかに大日本印刷が15%、三井化学が5%を出資する。両社はともに、このパッケージング工程に使われる材料を手がけている企業。この分野で協業を進めていくと見られる。

JICは今年6月、半導体材料のフォトレジスト大手・JSRの買収を発表している。これはJSRが材料業界の再編を目指し、自らJIC傘下入りを望んだことが背景にあった。

今回は親会社の富士通側の事情という側面が大きい。とはいえ、半導体政策の強化を推し進めている政府の思惑とも一致した動きだと言えるだろう。

石阪 友貴:東洋経済 記者

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