北九州市が「水素に積極的」になる歴史的必然 日本最大級「洋上風力発電」2025年に稼働予定
東洋経済オンライン / 2023年12月27日 12時30分
今から122年前、この地に日本経済の基盤が築かれた。
明治政府がドイツから最新技術を取り入れ、先に独自技術で製鉄を行っていた岩手県釜石から技術者らを招き、官営八幡製鉄所の第1高炉に1901年2月、火が入った。
鉄鉱石や石炭の質がヨーロッパとは異なることなどからさまざまなトラブルが起こり、2度の高炉休止を余儀なくされるも1904年7月に再開。第1次世界大戦まで、銑鉄と銅材の国内シェアで75~90%を誇った。※内閣官房 産業遺産の世界遺産登録推進室「明治日本の産業革命遺産」を参考に筆者作成
ここは、現在の北九州市八幡東区東田(ひがしだ)。東田第1高炉跡を背景に、タカミヤ環境ミュージアムがある。周辺には、日本製鉄の事業所から約1.2kmの水素パイプラインが引かれており、水素に係わるさまざまな実証試験が行われてきた。
コロナ禍を経て、国がGX(グリーントランスフォーメーション)を掲げる中、水素を含めた北九州市における環境施策はどう変化しているのか。同市の各地を巡りながら、変わりゆく北九州市の姿を追った。
大気・水質汚染に悩まされた高度経済成長期
まずは、北九州市における環境行政の歩みを振り返ってみたい。
1963年2月、門司市、小倉市、若松市、八幡市、そして戸畑市の5市が合併して誕生した北九州市は、1960年代から1970年代にかけて、高度経済成長の反動として大気汚染と水質汚染に悩まされた。
煤煙による空は当時「七色の煙」と呼ばれ、街の繁栄と環境とのバランスが大きく崩れていた。そうした状況を打破するため、北九州市は「北九州市公害防止条例」等を制定する。
行政、事業者、そして市民による精力的な活動を進めた結果、1980年代半ばには街の雰囲気と市民の街に対する意識は大きく変わった。その後、北九州市の環境政策は、公害対策から快適な都市環境の創造に重きを置くようになっていく。
1990年代後半になると、工場地域や市街地で発生する大量の廃棄物をゼロにするという、“資源循環”の観点がこれに加わり、1997年には国から全国初の「エコタウン」承認を受けている。
このあたりから、近年でいう“環境と経済の好循環”に向けた市”としての意識のベースが、徐々にできたのではないだろうか。つまり、「環境保全と経済発展のバランスをうまく取る」という概念だ。
さらに2000年代後半になると、温室効果ガス削減が重視されるようになり、国から全国5都市とともに、北九州市が「環境モデル都市」に第1号選定を受ける。
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