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「新しい封建制」の到来から私たちは逃れられない ローマ帝国末期を想起する都市衰退と人口流出

東洋経済オンライン / 2023年12月28日 9時0分

もう一つ、明らかに勝ち組なのが大手製薬会社だ。2021年5月、ファイザー社だけで同年末までに新型コロナワクチンから260億ドルの収益を得ると予測され、同社の増収は2022年の第1四半期まで続いた。

通常の民主的手続きを回避する傾向

COVID─19は、先進国のなかに勝ち組と負け組を生み出しただけではなく、世界における富裕国と貧困国のあいだの格差をも浮き彫りにした。今回のパンデミックで壊滅的打撃を受けたのが最貧困国である。過去半世紀にわたる東アジアの発展にとってきわめて重要な要素である工業能力が十分に備わっていなかった国々である。

アフリカその他の貧しい地域では(カール・マルクスの言うところの)「産業予備軍」〔訳注:失業または半失業状態にあって、就業の機会を持つ人びと〕が拡大し、社会不安を惹起させるほどにまで膨れ上がっている。ラテンアメリカ、アフリカ、中東では、すでに長期債務不履行に陥っている国もあり、今後もあとに続く国が出てくるかもしれない。

パンデミックの政治的余波は、欧米諸国でも混乱を招いた。病院は患者であふれ、死者が急増し、医療従事者のウイルス感染も相次いだため、COVID─19への強力な対策が確実に求められた。その一環として、ワクチン製造が加速されたことは評価に値する。

しかし、ほとんどの国の当局者のあいだに、ある顕著な傾向がみられた。政策決定に際して通常の民主的手続きを回避する傾向である。厳しい措置が時に独断で講じられることもあった。パンデミックが長引くにつれ、暫定的な命令が何年も引き延ばされ、どこかの段階で必要とされるはずの国民の承認が得られないまま定着していった。こうして、国民自治の原則は損なわれた。

このような危機のなかで冷静な議論を行うことは、不可能ではないにせよ難しくなった。概して主要メディアは、政府当局が発表した内容を繰り返し伝えるだけであった。ウイルスとその起源、影響を最小限に抑えるための最善策などにたいする異論は、たいてい抑え込まれた。COVID─19対策の規制を強く支持する者もこれに強硬に反対する者もお互いを悪者扱いした。陰謀論や怪しげな治療法を勧める影響力のある主張が特に右派の側から起こった。

確かに、生命や健康に害を及ぼすおそれのある提言については精査されるべきではあるが、政府関係者やソーシャルメディアが、支配的な政策にたいする熟慮された批判すら排除しようとしたことは問題である。歴史上幾多の危機がそうであったように、間違いなく公衆衛生上の深刻な危機である新型コロナパンデミックは、政府による言論と行動の統制をかつてなく強化する状況をもたらした。国民の怒りが爆発したのはアメリカだけではない。フランスやオーストラリアなど他の民主主義国も同じであった。

「エコ中世的」世界観

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