ロードスター「いらない子」と言われた車の奇跡 苦境をはねのけライトウェイト復権の立役者へ
東洋経済オンライン / 2024年1月3日 12時0分
2024年、マツダの2人乗りオープンスポーツカー「ロードスター」が、生誕35年目を迎える。
1989年に「ユーノス・ロードスター」の名で登場し、今も国内で唯一無二のオープンスポーツカーとして根強い人気をほこる、言わずとしれた1台だ。
ロードスターが長らく、人気を維持している理由は数多くある。しかし、ロードスターを25年以上にわたり愛車としてきた筆者が思うに、もっとも重要なことはやはり「ライトウェイトスポーツであること」だ。
20~30年以上経った今でも語り継がれるクルマが、続々と自動車メーカーから投入された1990年代。その頃の熱気をつくったクルマたちがそれぞれ生まれた歴史や今に何を残したかの意味を「東洋経済オンライン自動車最前線」の書き手たちが連ねていく。
ライトウェイトの魅力と苦悩
ライトウェイトスポーツは、戦後間もない英国で大いに盛り上がったクルマのジャンルだ。小さく軽量、そして後輪駆動(FR)のオープンカーが、数多く生まれて人気を集めた。
ロータス「エラン」「MG-A」、トライアンフ「スピットファイア」、オースチン「ヒーレー」など、綺羅星のような名車が存在する。
小さいから軽快に走るし、安価であったことも人気を集めた理由だ。ただし、パワーがないため速いわけはなし、決して豪華なクルマでもない。
「軽快で楽しい」と「手の届く安価」の2点。これがライトウェイトスポーツカーの神髄となる。ロードスターは、その神髄を再現したからこそ、世界中にファンを生むことに成功したのだ。
しかし、ライトウェイトスポーツの魅力は、理解されづらい。実際に乗ってみなければ、ピンとこないはずだ。「スポーツカーなのに速くない」「2人乗りは不便」「屋根が幌なんて危険だ」といった、反対意見も数多くある。
実際に、ロードスターが生まれた1980年代後半は、世界的にライトウェイトスポーツカーは絶滅状態だった。
ちょうど1980年代は、室内を広くできる前輪駆動車(FF)が新しくて便利な車種として普及して、後輪駆動車(FR)を駆逐していった時代である。景気が上向きだったことで、「高性能で速い」ことも重視されていた。
そのため、1980年代中盤にロードスターの開発が始まったときは、マツダ社内でもさんざんに反対意見が出たという。しかも、その開発はマツダ社内ではなく、英国の開発会社に委託する予定だったというから、当時の様子がうかがえる。
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