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「熱帯の人は楽に生きられるから貧しい」の大誤解 貧しい国の労働時間は富裕国よりも長い現実

東洋経済オンライン / 2024年1月3日 9時0分

熱帯に多くある貧しい国々の人たちには労働倫理がないというのは、まったくの作り話です。実際、貧しい国の人たちは富裕国の人々よりよっぽど働いています。(写真:bloodua/PIXTA)

「熱帯の国ではバナナやココナッツなど自然の恵みのおかげであまり働く必要がない。そのため彼らは貧しいままなのだ」という言説を聞いたことがないだろうか。

ベストセラー『世界経済を破綻させる23の嘘』などの著書がある経済学者のハジュン・チャン氏の最新刊『経済学レシピ:食いしん坊経済学者がオクラを食べながら資本主義と自由を考えた』から、「熱帯の人は楽に生きられるから貧しいという誤解」について一部抜粋・編集のうえお届けする。

熱帯の人は怠け者?

多くの人たちにとって、ココナッツが熱帯の自然の豊かな恵みを象徴するものであるせいか、その地方に蔓延している貧困の問題を「説明」するときにもしばしばココナッツが用いられる。

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富裕国ではよく、貧しい国が貧しさから脱せないのは、その国の人々がまじめに働かないせいだと考えられている。また、大半の貧しい国が熱帯にあることから、その国の人々に労働倫理が欠けているのは、自然の豊かな恵みのおかげで楽に生きていけるせいだという説も、しばしば耳にする。

そのような説によれば、熱帯では食べ物──バナナ、ココナッツ、マンゴーなど、いかにも熱帯の果物の数々──があちこちで育つ一方、気温も高いので、頑丈な建物や立派な服も要らない。したがって、熱帯の国々の人々は生きるために汗を流して働く必要がなく、その結果として、あまり勤勉にはならないのだという。

このような説が語られるときには、(侮蔑的な主張なので、ふつうは私的な場でしか口にされないが)しばしばココナッツが使われる。すなわち、この「熱帯地方には労働倫理がない」説によれば、熱帯の国々が貧しいのは、人々がココナッツの木の下で寝そべって、その実が落ちてくるのを待つばかりで、自分で何かを育てようとか、作ろうとかしないからだというのだ。

もっともらしい説だが、これは完全な誤りだ。

第一に、熱帯の国々には、ココナッツの木の下で寝そべるような愚かな人はめったにいない。たとえ、ただでココナッツを手に入れたくてもだ。そんなことをしたら、落ちてきたココナッツに頭蓋骨を砕かれる危険がある(実際、落下したココナッツに当たって死ぬ人はいる。都市伝説では鮫に殺されるより、ココナッツに殺される人のほうが多いといわれているほどだ。もちろんそれはほんとうではないが)。

だから、「怠け者の原住民」が仮にいたとしても、木の下では寝ない。別の場所で待ち、ときどきココナッツが落ちていないかどうか、木の下に確かめに行くというのがふつうだろう。

貧しい国の人の方が、労働参加率が高い

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