1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

「母は癌、父はうつ、子は発達障害」娘の介護の顛末 大変な状況ほど、介護する側が意識したいこと

東洋経済オンライン / 2024年1月14日 9時0分

これ以上、夫に介護してもらうのは難しいと考えた私は、母親に「ご家族が大変そうにも見えますが、このまま家で過ごすより、入院のほうが安心ということはないですか?」と水を向けたこともありました。

ところが母親は、その状況を踏まえても「家がいい」と言います。それまでの入院生活に懲りていた経緯もあり、夫がヒステリー状態になってどれだけ騒ぎ立てようが、「もう入院はしたくない」と固く心に決めているようでした。

最大の問題は、こうした状況にもかかわらず、両親宅には訪問介護が入っていないことです。聞けば、「家に見知らぬ誰かが来るのが嫌」という父親の意向で、母親の要介護認定は受けているものの、身体介助や日常生活のサポートをしてもらうヘルパーは頼んでいません。それによって父親の介護負担が増しているのですが、自分の病気の影響もあり、他人が家に入るのをどうしても受け入れられないようでした。

私たち訪問診療と訪問看護は、母親の在宅療養を支えるために、週に一度だけ入ることを許されましたが、父親と落ち着いてコミュニケーションを取るのは難しい状態です。

母親の主な介護者は夫である父親ですが、介護者としての役割を十分に果たせているとはいえません。そこで近くに住むA子さんが、できる範囲で両親の生活をサポートしていたわけですが、自分の子どもと親のダブルケアとなり、それも限界に来ていました。

母親の訪問診療で伺った際、A子さんが私に自分が置かれた状況がいかに大変で参っているか、必死で訴える姿を見て、「事態は深刻だ」と受け止めました。

家族のなかに介護が必要な人が出てきたとき、その介護で中心的な役割を担うのは、多くの場合、家族の誰かになります。

介護というと、往々にして病気になった人(介護を受ける側)に目が行きがちですが、それと同じぐらい“介護する側”である介護者が、心身ともに健康である状態でいることが大切だと思っています。

なぜなら、介護者の最も大切な役割の1つに、状況を俯瞰して正確に捉え、困ったことがあれば誰かに相談することがあるためです。困っている現状があるなら、「困っている」ときちんと認識したうえで、誰かに相談するのがとても大切です。

介護者は「司令塔」の視点も大切

介護者が必ずしも自分の手で直接的に介護することがすべてではありません。たとえ自分が介護にあまり時間を割けなかったとしても、司令塔的に物事を判断していくことが必要です。状況を踏まえて、落ち着いた判断ができれば、ほかの人の手や介護サービスを頼ることもできます。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください