ヴィレヴァンが知らぬ間にマズいことになってた 「遊べる本屋」はなぜ魅力を失ってしまったのか
東洋経済オンライン / 2024年1月18日 18時30分
「遊べる本屋」、ヴィレッジヴァンガード。「ヴィレヴァン」として全国に店舗を広げる同店だが、知らないうちにそこそこマズいことになっていたらしい。
というのも、2023年11月中間決算によると、営業損失が7億4900万円で、前年同期の1億7600万円の損失から赤字が拡大しているからだ。既存店の数はここ数年で減り続けており、それによる単純な減収、そして人件費や物価高の影響も響いている。
売上高ベースで見ると、2016年5月期が最高収益で、467億5800万円。ただし、そのときも営業赤字は2億円ほど出ている。2007年に買収した中南米雑貨の「チチカカ」が、その経営の足を大きく引っ張っていたようだ。
2017年にはチチカカを売却し、ヴィレヴァンのみでの営業を続けているが、その後も黒字化と赤字転落を繰り返し、経営の足取りはふらついている。
ヴィレヴァンのジレンマ
ライターの不破聡は、こうした迷走の背景について、コロナ禍によって同社がオンライン事業に力を入れたことの影響を挙げる。
ヴィレヴァンの大きな特徴は、本やCD、DVDといった雑貨がジャンルレスにそこかしこに並べられ、まるで洞窟のようになっている店内空間だ。エンターテインメント性を押し出した店舗の空間こそ、ヴィレヴァンの強みの一つだった。だから、オンライン事業への注力は、その強みが生かせなくなるジレンマを引き起こすのだ……と、不破は言う。(続々と店舗を閉鎖するヴィレッジヴァンガード。オンライン化を遮る“壁”/日刊SPA!)
とはいえ、ヴィレヴァンの収益全体におけるオンライン事業の割合はさほど高くなく、私はむしろリアル店舗の空間の作り方そのものに、ヴィレヴァンの業績が不安定な要因が隠れているように思える。
私はこれまで、チェーンストアをはじめとする商業施設について、空間という切り口から分析してきた。ここでは、それらの知見も生かして、ヴィレヴァンの空間に潜んでいる問題点をあぶり出してみよう。
ヴィレヴァンは「世界観」を大事にしてきた
まずは、ヴィレヴァンの店を訪れてみる。店内の通路はゴチャゴチャしていて、迷路のよう。うかうかしていると、さっき通った道に戻ってきてしまう。
本屋ではあるが、扱っているのは本に限らず、CDやDVD、あるいは雑貨に洋服、なんでもあり。それぞれの商品にはその商品の魅力を伝えるPOPが書かれ、そこにはちょっとおどけた商品の宣伝が書いてある。
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