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航空機事故「責任は誰に?」の非難が無意味な理由 ブラックボックス解析で見えてくる意外な事実

東洋経済オンライン / 2024年1月22日 12時30分

やはりただの民間機ではない、とイスラエル空軍基地の司令官たちは疑念を強めた。きっと敵国エジプトと共謀し、軍事目的で航行しているに違いない。基地内の緊張感は一気に高まった。

イスラエル空軍基地はファントム戦闘機のパイロットに指令を出した。「114便がイスラエルの中心部に到達する前に、シナイ半島のレフィディム(現ビルギフガファ)空軍基地に強制着陸させよ」

ファントム戦闘機のパイロットは、すぐに翼を振って114便に警告の合図を送り、無線で着陸の指示をした。通常なら、114便も翼を振って無線に応えるのが国際的な慣習だ。しかし114便はどちらも行わず、そのままイスラエル上空へと飛行を続けた。

しかしファントム戦闘機のパイロットには、着陸の指示は間違いなく伝わったという確信があった。戦闘機と114便はほんの数メートルの間隔で並飛行し、戦闘機のパイロットからは、114便のコックピットが見えていた。そこで手振りで「着陸」の合図をすると、旅客機の操縦士が「了解」の合図を送ってきたからだ。それにもかかわらず、旅客機はまだイスラエル上空に向かっている。

14時01分、ファントム戦闘機のパイロットは基地からの指示を受け、114便の機首前方に曳光弾による警告射撃を行った。そこでやっと114便は強制着陸の指示に従い、レフィディム基地に向かって方向転換した。そして5000フィート降下したところでランディング・ギアを降ろした。

ところがそのあと突然、逃げるように西(エジプトの方向)へ急旋回した。そしてエンジンを加速すると、再び上昇し始めたのである。

イスラエル空軍には、意図がまったく理解できなかった。旅客機の操縦士は、乗客の安全を一番に考えるのが義務だ。その義務を果たすには、ここで着陸する以外にないはずなのに。

ファントム戦闘機のパイロットは、旅客機の窓から客室を覗こうと試みたが、どの窓にも日よけが下りていた。これも妙だ、「敵機」に違いない。イスラエル空軍はほぼ確信した。乗客も十中八九乗っていないだろう。今後の領空侵犯に示しをつけるためにも、強制着陸の指示に従わせなければならない。

14時08分、ファントム戦闘機は114便の翼の先端を銃撃。しかしそれでもなお114便は従おうとしない。

14時10分、今度は翼の根元部分を銃撃。機体に損傷を負った旅客機は緊急着陸態勢に入り、そのまま下の砂漠に胴体着陸するものと思われた。しかし旅客機の機体はそう簡単に止まらない。結局機体は砂漠を600メートル滑ったのち、砂丘に突っ込み爆発、炎上したのだった。

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