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航空機事故「責任は誰に?」の非難が無意味な理由 ブラックボックス解析で見えてくる意外な事実

東洋経済オンライン / 2024年1月22日 12時30分

では114便はなぜファントム戦闘機の警告に従わず飛行を続けたのか? なぜ逃げるようにエジプトの方向へ旋回したのか? なぜパイロットは、自分たちはおろか乗客の命まで危険に晒そうとしたのか?

実はこれらの答えはすでに見つかっている。機体の爆発炎上に耐えたブラックボックスが回収されたからだ。これによって適切な調査が行われ、のちにシステムの改善がなされた。

もし感情的な(えてして独善的な)責任のなすり合いで事故を単純に片付けていたら、このような進化は決してもたらされなかっただろう。

事件当日、114便はリビア北東部のベンガジから隣国エジプトのカイロへ向かっていた。この日、エジプトでは砂嵐が発生しており、視界が悪化していた。

コックピットの前列左にはフランス人の機長、その後ろには同じくフランス人の航空機関士。副操縦士はリビア人でフランス語が流暢ではなく、機長と航空機関士の会話には参加していない。

実は、このとき114便はすでに航路から60マイル(約100キロメートル)以上外れ、エジプトの軍事施設上空を飛んでいたが、3人ともまったく気づいていなかった。

本来ならとっくにエジプト軍の警報システムが作動しているはずだ。しかしこの日は砂嵐などシステムに影響する要因がいくつかあり、114便は探知されないまま、イスラエル占領下のシナイ半島上空に差しかかろうとしていた。

やがて航路を外れているのではないかと疑い始めた機長が、航空機関士に対してフランス語で懸念を口にしたが、副操縦士には何も言わなかった。

そして13時52分、カイロ・アプローチ(空港周辺の管制)から空港への進入許可が出た。しかし、空港からの誘導電波が伝える滑走路の位置は、機長が想定していた進入経路とは異なっていた。機長の混乱は高まるばかりだった。

コックピットからの景色

彼らが機体の位置を確認しようと奮闘する中、予期せぬ事態が起こる。突然、あたりに轟音が鳴り響いたのである。気づいたときには、114便は複数の戦闘機に囲まれていた。

戦闘機の機体には大きく「ダビデの星」(ユダヤ教・ユダヤ民族を象徴する星印)が描かれており、イスラエル軍のファントム戦闘機であることは明らかだ。しかし副操縦士はこれをエジプト軍のミグ戦闘機と誤認した。他の2人にも「ミグ戦闘機が4機後方にいます」と伝えた。

リビアとエジプトは友好関係にあったことから、114便のクルーはこう考えた。やはり自分たちは航路を逸脱していたのだ。だから味方の戦闘機がカイロ空港まで誘導しようとしてくれているのだろう。

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