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航空機事故「責任は誰に?」の非難が無意味な理由 ブラックボックス解析で見えてくる意外な事実

東洋経済オンライン / 2024年1月22日 12時30分

のちに判明した事実によれば114便は一般の旅客機で、リビア北東部のベンガジからエジプトのカイロへ向かう途中、誤って航路を外れ、イスラエル領空に迷い込んでいただけだった。乗客は113人。そのうち108名が機体の炎上に巻き込まれて亡くなった。

この事件の翌日、世界中で激しい抗議が湧き起こった。「非武装の民間機を撃ち落とすなんて、イスラエルはどういうつもりだ!」「あんなにたくさんの罪のない人を殺すなんて、いったい何を考えている!」

非難は、失敗や好ましくない出来事に対する人間のごく一般的な反応と言える。何か間違いが起こると、人はその経緯よりも、「誰の責任か」を追及することに気をとられる傾向がある。我々は、たとえどれだけ複雑な出来事でも、新聞や雑誌の見出しのように単純化してしまうのだ。

「イスラエル軍が何の罪もない旅行者108人を殺害!」「無責任な旅客機の操縦士が着陸の指示を無視!」

非難は、人間の脳に潜む先入観によって物事を過度に単純化してしまう行為だ。ある意味、講釈の誤りをさらに悪化させたものと言えるかもしれない。非難は我々の学習能力を妨げるばかりでなく、ときには深刻な結果をもたらす。

自分の失敗を隠す「内因」が認知的不協和だとしたら、「外因」とも言えるのが、非難というプレッシャーだ。非難の衝動は、組織内に強力な負のエネルギーを生む。

何かミスが起こったときに、「担当者の不注意だ!」「怠慢だ!」と真っ先に非難が始まる環境では、誰でも失敗を隠したくなる。しかし、もし「失敗は学習のチャンス」ととらえる組織文化が根付いていれば、非難よりもまず、何が起こったのかを詳しく調査しようという意志が働くだろう。

適切な調査を行えば、ふたつのチャンスがもたらされる。ひとつは貴重な学習のチャンス。失敗から学んで潜在的な問題を解決できれば、組織の進化につながる。

もうひとつは、オープンな組織文化を構築するチャンス。ミスを犯しても不当に非難されなければ、当事者は自分の偶発的なミスや、それにかかわる重要な情報を進んで報告するようになる。するとさらに進化の勢いは増していく。

「世界の複雑さ」を受け入れる

複雑な世界から物事を学ぶには、その複雑さと向き合わなければならない。何でも単純に考えてすぐに誰かを非難するのはやめよう。肝心なのは、問題を深く探って、本当に何が起こったのかを突き止めることだ。その姿勢があれば、隠蔽や自己正当化のない、オープンで誠実な組織文化を構築することができる。

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