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生成AIの「無断学習」を規制するうえでの論点 強く規制することにはデメリットも

東洋経済オンライン / 2024年1月23日 17時0分

生成AIを扱う場合、著作権などの問題を無視することはできません(写真:Boonyakiat Chaloemchavalid/getty)

生成AIの登場によって、数年先の働き方すら不確かな状況になっています。本稿は、東大・松尾研究室所属のAI研究者・今井翔太氏の最新刊『生成AIで世界はこう変わる』より、将来的に生成AIによって生じるであろう影響とその負の側面、そして人類の未来への展望などについてご紹介します。

AIに聞けば、すべての疑問が解決する?

将来的にはGoogle検索や現在のChatGPTがパワーアップする形で「AIに聞けばなんでも解決する」世界がやってくると思われます。日常の悩みも、リアルタイムで起きていることも、ゲームの裏技も、仕事で行き詰まったことも、人類の積み上げた科学知識も含めた「なんでも」です。

現在のChatGPTなどの生成AIは、入力できる文字数の制限やハルシネーション(噓の情報を出力すること)、学習に使用するデータを収集した期間などの技術的制約から、真の意味でなんでも聞いて解決してくれるものではありません。

まして画像を入力してまともな回答をしてくれるAIはまだ少数であり、質問への回答に画像や動画、実際の操作画面などを返してくれる実用的なAIはまだ存在しません。

また、現在の生成AIは稼働させるために膨大な計算リソースを必要とすることから、個人が独占して利用することもできません。

一方、技術発展の異常なほどの速度を目にしている研究者の視点では、これらの技術的な問題については、おそらく中長期的には解決されるものと思っています。文字数の制限という点で言えば、本記事を執筆した短い期間でも、よく使用されるモデルで数倍、ある特定のモデルでは数百倍以上の性能改善をしたとの研究が出てきています。

また、2023年12月6日にはGoogle社が、こうした課題のいくつかを解決した「Gemini」と呼ばれる生成AIモデルを公開し、12月13日には「Gemini Pro」のプレビュー版を企業と開発者向けに提供開始しています(いずれもアメリカ時間)。

アイディアさえあれば、なんでも実現できる?

技術は人ができることを拡張するものです。

技術の1つである生成AIも、個人が実現できる限界を拡張する範囲は非常に広範におよびます。「アイディアはあるが、それを実現する能力がない」という人は多くいます。

よく実現されないアイディアには価値がないと言いますが、実現すれば価値が生まれるアイディアが埋もれてしまっているのなら、世界にとっての機会損失です。反対に、実現能力や金銭、人脈などの問題で実現されなかった世界中の人の頭の中のアイディアが、もし生成AIによって解放されれば、それは世界全体にとって大変価値があることです。

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