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生成AIの「無断学習」を規制するうえでの論点 強く規制することにはデメリットも

東洋経済オンライン / 2024年1月23日 17時0分

もちろん著作権法30条の4も、無制限に適用されるわけではありません。これが適用されるのは、「当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合」に限られ、「当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない」というただし書きが付いています。

現在の日本の著作権法の範囲内で、生成AIの学習について議論すべき焦点があるとすれば、この部分でしょう。ただ、これについても生成AIの学習段階では、文章や画像の一般的な概念・アイディアを獲得することが目的であることから、享受目的には該当しないという考えがあります。ただし書きの適用についてもかなり限られた状況を想定していることから、現時点では学術・法曹・行政の解釈では問題ないという考えが主流です。

これについては、少なくとも創作分野に関わる生成AIについて、本記事の執筆時点では決着がついているとは言いがたく、最終的に司法の判断を待つ形になるでしょう。生成AIを問題視する側の意見は、そもそもこのような著作権法(外国ではアメリカのフェアユース規定など)が現状に対応しておらず、生成AIの学習自体を規制する法改正を求めるというものです。

生成AIの問題点の解決には著作権法の改正も必要

ただ、すでに述べたように、このような学習自体を禁ずる方向の規制は(少なくとも法律レベルでは)考えにくいでしょう。このような学習を規制することによって、巻き込まれる範囲があまりにも広すぎます。仮に「著作物を学習データとするAI」について、「学習に使用するデータの著作権者の許可を取っていない」ものを規制する法律ができたとしましょう。当然、今存在する画像生成AIなどはほぼすべて規制されることになります。ここまでは規制を求める側の希望通りでしょう。

しかし同時に、われわれが日常的に使用するインターネット上のサービスの相当数も規制されます。Googleなどの検索サービスから、スマートフォンに初期搭載されているようなアプリまで、検索、写真の加工機能などの背後にはこのような学習を行ったAIが数多く存在します。「これまでのサービスの背後にあるAIは、生成を目的にしていなかった。今の生成AIとは違う」という意見もありえます。

では、先ほどの規制の対象を「著作物を学習データとするAI」から、「著作物を学習データとするAIのなかでも、生成的な動作を行うもの」に変えるとどうなるか。

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