「グローバル・ローカル・国民国家」という難問 「自由と平等の衝突」の解決に必要な「惻隠の心」
東洋経済オンライン / 2024年1月24日 9時0分
疫病と戦争で再強化される「国民国家」はどこへ向かうのか。拮抗する「民主主義と権威主義」のゆくえは。思想家の内田樹氏が、覇権国「アメリカ」と「中国」の比較統治論から読み解いた著書『街場の米中論』が、このほど上梓された。奈良県東吉野村で「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」を運営する古代地中海史研究者・青木真兵氏が同書を読み解く。
「アメリカの時代」以後にどう生きるか
僕たちが生きる世界は、この先どうなっていくのでしょうか。そして僕たちは何を指針として生活を送っていくべきなのでしょうか。本書にはそのヒントが書かれています。
世界GDPランキングにおける第1位と第2位のアメリカと中国は、名実ともに世界の二大大国です。
にもかかわらず、今まで僕たちはアメリカばかりを意識して生きてきました。確かに20世紀は「アメリカの時代」でしたし、特に日本は太平洋戦争に敗戦したことで、社会や経済、文化のあり方においてアメリカから多大な影響を受けてきました。日本の戦後の経済成長はアメリカが主導する資本主義陣営の中で達成することができたものですし、英語ができないとダメなような気がするけれど中国語ができなくても気にしないような、少なくとも僕はこのような感覚で生きてきました。
そして80年代に入ると、今まで敵対していた社会主義陣営の弱体化、戦後の福祉国家的政策が転換されていきました。イギリスのマーガレット・サッチャー元首相やアメリカのレーガン元大統領に代表されるように、次々と国営事業を民営化していく新自由主義的政策が行われ、日本では中曽根元首相がこれに追随しました。
1991年にソ連が崩壊し、1995年にはWidows95が発売されるとIT化も加わり、新自由主義にさらに拍車がかかります。これがアメリカが騎手となり一気に加速したグローバル化です。日本はますますアメリカの後についていけばいいと思ったことでしょう。しかし昨今のアメリカの凋落ぶりを見ていると、決してそんなことも言っていられなくなってきました。
アメリカについていってもダメなんじゃないか。このあたりの感覚はみなさん同様なのではないかと思います。ではどうすればいいのか。僕たちは何をモデルに生活を組み立て、自己形成を志していけばいいのでしょうか。
このような過渡的な時期こそ、物事の本質、つまりトレンドには乗りにくいけれど、短期間では決して変わらないものを見据えながら日々を送る必要があります。その「変わらないもの」こそが、本書で説かれている「地政学上の立地」です。日本が中国大陸のすぐ東側にあることは、文明の発祥以来変化していない事実です。一方、アメリカは太平洋を挟んだ遠く向こう側にあります。
グローバルとローカルの折り合い
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