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実写化「ゴールデンカムイ」驚嘆の感想で溢れる訳 原作漫画ファンも初見の人も圧倒されたこれだけの理由

東洋経済オンライン / 2024年1月26日 12時0分

漫画原作の実写化といえばファンを中心に話題となることも多いですが、映画「ゴールデンカムイ」は漫画ファン以外からも好評、好調な滑り出しをみせています(写真:映画「ゴールデンカムイ」公式サイトより)

映画『ゴールデンカムイ』が公開され、公開3日間で観客動員数35万人、興行収入5億円を突破するなど、順調な滑り出しだ。

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原作マンガは31巻ですでに完結しているが、評価も高い。今回は原作マンガを中心に、そのストーリーの魅力について迫りたい。

※映画で描かれた原作3巻までの内容に触れ、若干のネタバレがあります。ご注意ください。

日露戦争帰りの主人公と、アイヌの少女の遭遇

『ゴールデンカムイ』は、野田サトルによって「週刊ヤングジャンプ」で連載されていた作品である。明治時代の後期、北海道を舞台に、日露戦争から帰還した杉元佐一と、アイヌの少女アシリパが、隠されたアイヌの埋蔵金を追うという物語だ。(※アシリパの「リ」は本来、日本語表現にない小文字のリ)

もともと、野田サトルの曽祖父が日露戦争に出兵した屯田兵であったことが作品の原点となっている。当初は日露戦争帰りの若者を主人公にした「狩猟マンガ」として構想されたが、取材する中で「熊害」「土方歳三」「脱獄王」「埋蔵金伝説」「アイヌ」といった題材が組み込まれていったそうだ。

私は、この作品は「巨額の埋蔵金を探すアクションアドベンチャー」というエンタメ要素の裏に潜む「アイヌ文化をベースにした”生と死”というテーマ性」が何よりの魅力だと思っている。以下にそれを解説していきたい。

多くの人が挙げるように、この作品は「アイヌ文化」に対するリスペクトが高く、現代社会が失った、根源的だけど懐かしさもある、そんな世界観が広がっている。

その伝承者とも言えるのが、主人公と行動を共にするアイヌの少女アシリパだ。彼女は登場時点から、ヒグマをも倒す猛毒の矢や、厳しい自然を生き抜くサバイバル技術などに長けている。しかも、単なるスキルというより、積み重ねられたアイヌの文化がバックボーンにあるので、哲学的だ。

それらは時折出てくるアイヌ語に現れており、「マタカリブ(冬を徘徊するもの)」「ウェンカムイ(悪い神)」といったネーミングがなんとも奥深い。

ベースとなっているのは、「大地の哲学」とも呼ぶべき、自然への畏怖の念だ。「自然を汚してはならない」という先祖代々伝わる精神文化、世界観には、現代に生きる我々にも強く響くものがある。

例えば熊を狩猟した時には「肉は食い、毛皮は洋服にし、内臓は薬にする」とさばいていくが、作品を見ていると、それらの行動原理は理にかなっており、無駄がない。そうした世界観に浸ることができるのがこの作品の楽しさの一つであろう。

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