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都市部でも深刻化「買い物弱者」をどう救うか? セーフティネットとしての買い物を考える

東洋経済オンライン / 2024年1月29日 12時0分

そうした中で、多摩市は東京都による都営住宅の買い物弱者支援事業が始まる約4年前の2013年8月、京王電鉄と「地域発展の推進に関する包括連携協定」を提携している。

当時「ニュータウン再生検討会議」のもとで「幸せな暮らしの実現」「住んでもらえるまち・選んでもらえるまちの追求」を掲出。そのうえで、施策を推進していたことが背景にある。

京王電鉄との連携の一環として、京王電鉄による生鮮食料品や日用雑貨の移動販売車の運用を2013年11月から始めている。当時は移動販売に対する東京都のルールがなかったため、市の公共地などを活用して実施していたという。

多摩ニュータウンは高台に位置する立地のため、高齢者が徒歩や自転車で買い物にでかけるのは身体的に大変だ。さらに近年は、世帯人口が減る中で近隣のスーパーや商業センターが閉鎖されるなどの理由から、移動販売では生鮮食料品の需要が高い。

ただし、収益性の観点から移動販売を継続して行う事業者は限られており、現在は京王電鉄のみが対応している状況だ。

買い物も公共交通の一部として社会保障の時代に

このように、豊後大野市と東京都の買い物弱者の実情を見ると、都市部、都市周辺部、地方部、山間部などで実質的な課題は共通であるように思う。

買い物弱者は高齢者が多く、周辺の社会環境によらず、日常での買い物は「持ってきてもらった中(またはオンラインで提示されたモノの中から)自分の意思で買うものを選ぶ」ことを求めている。

そうなると、近年発達したAmazonや楽天といったECプラットフォームでのネット販売と大きな差異はないとの見方をする人もいるだろう。

だが、今回紹介した買い物弱者における買い物は、「生きていくための買い物」、または「生きがいのための買い物」という社会におけるセーフティネットの意味合いが色濃い。

現時点では、今回取材した基礎自治体では移動販売事業者、また地域住民に対する経済的な支援は行っていないが、それでも広義においては、今回紹介したような移動と買い物を組み合わせた対策は、基礎自治体における社会保障という見方もできる。

近年、基礎自治体の一部では「公共交通は社会保障」という考え方を示す。移動販売を含めた「買い物」という行為についても、公共交通の視点が今後さらに重要になってくる。

桃田 健史:ジャーナリスト

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