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アサヒが撤退「ストロング系」はなぜ広がったのか 「健全で持続可能な飲酒文化」は負け惜しみの感も

東洋経済オンライン / 2024年1月29日 18時0分

ストロング系を含むRTD市場の勝ち残りというのは、それぐらい熾烈なのである。

2017年にはNHKが危険性を報じる

ところで、調査会社インテージによる「缶チューハイ市場に占める高アルコール商品の割合」が、今より4割もあった2017年というのは、NHKの『ニュースウォッチ9』で”ストロング系缶チューハイ”の危険性が報じられた年でもある。

当時、数あるストロング系の中でもサントリーの「ストロングゼロ」は一大勢力になっており、インターネット上では「ストロングゼロ文学」やいらすとやのキャラクターがストロングゼロを飲んで、あらゆる不安から逃れる画像がミーム化してしまい、ストロング系は「飲む福祉」などと話題になった。

さらに、2018年末には芥川賞作家の金原ひとみ氏が文芸誌『新潮』(新潮社)で、厳しい現実から逃れるために、アルコール度数9%の缶チューハイ「ストロング」に依存していく女性編集者を描いた短編小説『ストロングゼロ』を発表している。

ただ、ストロング系の歴史は「ストロングゼロ」から始まるわけではない。RTD市場では2001年からキリンが「氷結」シリーズを缶チューハイとしてヒットさせていた。発売当初のアルコール度数は3〜5%程度だったが、2008年に「氷結 ストロング」というアルコール度数8%の「ストロング系」のハシリとなる缶チューハイの発売を開始。

そして2009年、サントリーはアルコール度数8%の「ストロングゼロ」を発表。折しもリーマンショックとデフレの時期と重なり、同社は「1本で十分酔えること」を目指して、2014年には度数を9%に変更。ちなみに、その前年の2013年にはキリンも「氷結 ストロング」のアルコール度数を8%から9%に変えている。

80年代には8%の缶チューハイが登場していた

こうして、熾烈なストロング系の覇権争いの火蓋が切り落とされたわけだが、さらに歴史をさかのぼれば、1984年に誕生した日本初の缶チューハイである宝酒造の「タカラcanチューハイ」は発売当初から、アルコール度数は8%だった。さらに、その前年の1983年に、サントリーは「タコハイ」という最近復活した甲類焼酎を炭酸で割った代物を出しており、本商品もアルコール度数は7%だった。

つまり、RTDタイプの缶チューハイは誕生当初から、すでにストロングだったわけである。そのため、2010年代に急にアルコール度数9%の"凶悪な酒"が誕生したわけではない。

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