バイデンの存在薄くなる3年目のウクライナ戦争 「ロシアが攻めてくる」欧州の危機感に応えられない
東洋経済オンライン / 2024年1月30日 7時0分
ロシアによるウクライナへの一方的侵攻は2024年2月末、3年目に突入する。筆者は前回「2024年・ロシアのプーチン大統領はどこへ行く?」(2024年01月13日付)で、「擬制の復活版ソ連」の構築を進めるプーチン氏がソ連時代の「影響圏」復活を狙ってバルト3国などへ紛争を広げる恐れを指摘した。
これを踏まえて、今回は、より視野を広げて、ウクライナ情勢をめぐる国際情勢の焦点をまとめてみた。
ゼレンスキーがアメリカに激怒した理由
日本ではあまり注目されなかったが、2024年1月16日、スイス東部ダボスで開催されていた世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、ウクライナのゼレンスキー大統領が行った演説が国際的に大きな波紋を呼んだ。これまでにない強い調子でアメリカのバイデン政権を真っ向から批判したからだ。
キーワードは「エスカレーション」だ。それは、侵攻前も侵攻後もアメリカがつねにウクライナに言って来たのは、ロシアとの間で「エスカレーションを引き起こすな」という同じメッセージだった。
2022年11月、ロシアのミサイルを迎撃しようとしたウクライナ側の防空ミサイルとみられるものが逸れてポーランドに着弾した際も、アメリカ政府は関与していないウクライナに対し、「エスカレーションを引き起こすな」とお門違いの注意をしてきたという。
ゼレンスキー氏はアメリカからの、この「エスカレーションさせるな」発言について「プーチンに対し『あなたが勝ちますよ』と言っているようなものだ」と非難した。
では、なぜゼレンスキー氏がダボス会議という大舞台で、最大の軍事支援国であるバイデン政権に対しこれほどの非難をしたのか。
キーウの軍事筋によると、この背景には、ダボスでのバイデン政権からのある密かな提案がウクライナ側を激怒させたことがある。アメリカ政府高官がウクライナ側に対し、東部、南部の領土奪還を当面断念し、クリミア半島奪還に目標を絞れ、と言ってきたという。これにゼレンスキー氏が激怒したのだ。
ウクライナからすれば、2023年6月に開始した大規模反攻作戦が不発に終わった最大の要因は、アメリカがエスカレーション回避論でウクライナを押さえつける一方で、F16戦闘機など必要な武器を供与しなかったことだ。
キーウの希望通り、供与が実現していれば、2023年末までに全占領地を奪還できていたはずだ、との怒りが充満していた。
ダボスでのアメリカからの戦略変更提案が、これまで2年間溜まっていたバイデン政権への不満のガスに火をつけたようだ。
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