蜜月終焉、フィリピン正・副大統領間で大抗争勃発 マルコスとドゥテルテ、大統領選から一転、対立激化
東洋経済オンライン / 2024年1月31日 8時0分
実際、今回も発言2日後の1月24日に「発言が断片的に解釈された」と副大統領職の辞任を否定した。発言の意図は「なんなら辞めてやる」というボンボン氏へ牽制が目的だったと推測される。
ボンボン氏は「水の流れを読む(観測気球をあげる)ためでは」と論評したが、実際は大統領への三行半、あるいは決裂宣言だった可能性もある。
フィリピンの正副大統領はアメリカと違ってペアで選ばれるわけではなく、別々の選挙で選ばれる。このため過去ほとんどの場合、就任後の正副大統領は対立し、副大統領は重要な役割を与えられなかった。
しかしボンボン氏とサラ氏の場合、選挙戦の経緯や両家の関係から結束は固いとみられていた。ところが蜜月の終わりは予想より早く訪れた。就任から1年足らずで、両者の関係に暗雲が漂い出す。
サラ氏からすれば、ボンボン氏の変節がゆえだ。裏切りと受け止めているのかもしれない。ボンボン氏は選挙中、具体的な政策はほとんど語らず、「ドゥテルテ政権の継承」を連呼した。
サラ氏が譲ったからこそ大統領の座にたどり着いたボンボン氏の立場を考えると、ドゥテルテ陣営に配慮しながら政権運営を進めるとみられていた。
なぜ不協和音が広がったのか
ところがふたを開けると、新政権はさまざまな分野で前政権の政策を覆した。経緯はともあれ、いったん権力を握った側は強い。主導権はボンボン氏に移り、遠慮は消えてゆく。
最も明確な政策変更は、外交・安全保障分野だ。ドゥテルテ政権の嫌米親中路線に対し、現政権は親米路線を徹底させ、中国に対して南シナ海領有権問題で一歩も引かない立場を明確にした。
アキノ政権が2013年、国際海洋法条約に基づき、南シナ海の領有権をめぐる中国の主張を「国際法違反」としてオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所に提訴し、2016年7月にフィリピン側の勝訴となった裁定について、ボンボン氏は選挙中、「片方の当事者しか参加しない以上、仲裁の意味をなさない」と発言していた。
ところが就任後はアメリカ政権と歩調を合わせ、ことあるごとに国際海洋法を持ち出して中国を批判している。そのせいもあって南シナ海における中国のフィリピン艦船への嫌がらせはエスカレートしている。
政権発足時、副大統領兼務の国防相ポストを希望しているとささやかれていたサラ氏はボンボン氏の意向で教育相に回った。国防相であったなら対中政策は違った展開になっていた可能性がある。
亀裂が初めて公となったのは選挙1年後の2023年5月だった。下院の上級副議長だったグロリア・アロヨ元大統領が一般の副議長に降格された。
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