蜜月終焉、フィリピン正・副大統領間で大抗争勃発 マルコスとドゥテルテ、大統領選から一転、対立激化
東洋経済オンライン / 2024年1月31日 8時0分
アロヨ氏は、ロムアルデス議長を追い落とす院内クーデターを企てたことが露見し返り討ちにあったとの見方が広がるなか、アロヨ氏と親しいサラ氏は所属政党ラカス-CMDを離党した。同党のトップはロムアルデス議長。アロヨ氏の処遇に反発しての離党だった。
ボンボン+下院議長VSドゥテルテ陣営の構図
ロムアルデス氏はサラ氏に対抗して次期大統領の座を狙っているとされ、ドゥテルテ陣営との対立があらわになっている。ボンボン氏自身はサラ氏やアロヨ氏らとあからさまに敵対する姿を見せてはいないが、サラ氏よりロムアルデス氏との連携に重きを置き、政権運営の中軸に据えていることは明らかだ。
ドゥテルテ対ロムアルデスとの確執は、2024年度政府予算案からサラ氏率いる副大統領府と教育省が要求した計6億5000万ペソ(約17億円)の機密費を下院が削除したことで隠せぬものとなった。
安全保障に関係のない副大統領府や教育省が過去、機密費を受け取ったことがないことや、サラ氏が前年、大統領府の予算から割譲された1億2500億ペソ(約3億3000万円)の機密費をわずか11日間で費消したことが明らかになり、野党やメディアから批判が高まったことを受けた措置だった。
しかし、サラ氏は「平和と秩序のために割り当てられた資金(機密費)を攻撃する者は陰湿な動機を持っている。国民の敵だ」などと反発した。父のドゥテルテ氏もテレビで「下院は腐っている。ロムアルデスを監査しろ」と吠えたことで、さらに世間の注目が集まった。
サラ氏は政権運営でさまざまな不満をためていたとみられるが、自らが参加する政権への表立った批判は避けていた。ところが政府が2023年11月28日、フィリピン共産党(CPP)の統一戦線組織、民族民主戦線(NDF)との間で和平交渉を再開すると決めたことで、怒りが爆発した。
「大統領、これは悪魔の合意だ」との公式声明を出し、その後もCPPとNDFを「裏切り者」「欺く者」「暴力的な敵」と罵倒し、地域社会に大混乱をもたらすと警告した。和平交渉は大統領だった父が2017年11月に打ち切っていた。
ICC対応で堪忍袋の緒が切れた
不協和音が響くなか、国際刑事裁判所(ICC)をめぐるボンボン氏の発言でドゥテルテ陣営の堪忍袋の緒が切れた。ICCは前政権の「麻薬撲滅戦争」が「人道に対する罪」などにあたるとの告発を受け、捜査を続けている。
政府発表だけでも「戦争」にからんで6000人以上が殺され、その多くは司法の手続きを経ない超法規的殺人だった。ICCは前大統領や側近だったデラロサ国家警察長官(現上院議員)らが「大量虐殺」に関与した疑いをもち、逮捕状の発布も検討しているとされる。
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