日本はこのまま「国家の衰退」を黙って待つだけか いまこそよみがえる、福沢諭吉からの警告
東洋経済オンライン / 2024年2月2日 9時0分
大国の盛衰は、歴史の必然である。過去の歴史を見ても、永遠に栄光の座についている国などない。栄光の座についていた西欧は、やがて来るだろう衰退の運命を恐れた。栄光をつかんだ国は必ず亡びる。だからこそ、だれしもその栄光が長く続くことを望む。
そのためには、過去の帝国の栄光がどうやって滅んだのかという理由を知ることだ。こうして、18世紀から19世紀に「文明の衰退論」が一種のブームとなり、さまざまな著作が現れた。
18~19世紀「文明の衰退論」ブーム
その先駆けが、シャルル=ルイ・ド・モンテスキュー(1689~1755年)の『ローマ人盛衰原因論』(1734年)である。モンテスキューは、こう述べている。
「ローマの繁栄の原因の一つは、その王たちがすべて偉大な人物であったことである。歴史の中で、これほど政治家や名将たちが相次いで現れたことは他に例をみない。社会が成立する時、制度を作るのは国家の指導者である。そして、次には制度が指導者をつくりだす」(田中治男、栗田伸子訳、岩波文庫、15ページ)
しかし、いつの間にか国は崩壊していった。それはなぜか。それはそうした優れた人々がいなくなり、腐敗が国中に蔓延したからである。
「ローマ人はあらゆる民族に命令するところまで到達した。それは戦争の技術によってのみならず、また慎慮、英知、不屈の精神、栄光と祖国とへの愛によることであった。皇帝たちの下で、これらの徳が失われていった時も、軍事的技術だけは残り、それでもって、彼らは、君主の弱さや暴政にもかかわらず、それまで獲得したものを保持した。しかし、腐敗が軍隊の中まで到達した時、ローマ人はあらゆる民族の餌食となった。武器によって打ち立てられた帝国は、武器によって維持されなければならない」(206~207ページ)
19世紀西洋諸国は、産業革命と資本主義という武器によって世界を制覇したが、このローマ帝国の衰退を語るモンテスキューの言葉に、幾分かの不安を覚えたと思われる。しかし、19世紀により強化される帝国主義的な西欧支配の前で、やがて不安ではなく、慢心へと進んでいった。
19世紀の政治家兼歴史家であったフランスのフランソワ・ピエール・ギョーム・ギゾー(1787~1874年)は、『ヨーロッパ文明史-ローマ帝国よりフランス革命にいたる』(1828年、安土正夫訳、みすず書房、1987 年)の中で、西欧文明の優秀さを、物質文明とキリスト教的精神文明だと主張しているが、まさに向かうところ敵なしの西欧の力は、この2つを持つ限り非西欧に対して盤石であると考えていた。
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