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10浪「農工大」夢を諦めた彼を救った"ある存在" なぜ獣医の夢に方向転換?5浪目のある出会い

東洋経済オンライン / 2024年2月4日 7時0分

「最も精神的につらかったのがこの時期でした」と彼は振り返ります。

しかし、そうした鬱屈した日々から立ち直る出来事も5浪目に起こります。絶望のまっただ中にいる彼を救ったのは、実家の犬でした。

「5浪目の年に16年飼っていた実家のチワワが亡くなったあと、新しいチワワを飼うことになったのですが、この子が不安行動を起こす性質があったんです。

僕はその子と同じ部屋で生活していたのですが、親が僕を呼んだり、インターホンが鳴ったりしたら、僕が部屋からいなくなることがわかっているからパニックになって吠えるんです。まるで部屋に自分だけにしないで、置いていかないでと言うかのように。

だから僕は何としてもかわいく愛しいこの子のために生きたいと思ったんです。以前、敏感で“人間”の精神科医には向いていないと言われましたが、“動物”の精神科医なら、むしろ自分のような人間には向いているんじゃないかと思ったので、獣医になりたいと思い受験勉強を開始しました」

人生に思い悩み、絶望した彼はようやく希望を抱いたこの年から、センター試験を受け出すようになります。5浪目こそ、現役とほぼ変わらない点数だったものの、毎年コツコツ勉強を続けた彼は、ジワジワと成績を上げていきました。

「5浪〜9浪目にかけては予備校に通ってはいたものの、体調との兼ね合いでほとんど行けず、自宅で浪人していました。毎年成績が上がっていき、9浪目には7割以上を取れるようになってきました。

とはいえ、この5年間は毎年前期試験で地方の獣医学部を受け続けてきたのですが、なかなか合格できず……。9浪目に親に『大学に一度受かったほうがいい』と言われたので、地方の国公立の農学部を後期試験で受けて、はじめて合格通知を手にしました」

ついに掴んだ合格だが、入学を辞退

この合格で気分をよくしたレトロプリンさんは、合格した国公立大学に進学しようとも考えますが、悩んだすえに入学を辞退します。

「農学部を受けたのは、勉強をするうちに樹木の分野に関して興味を持ったからです。動物行動分野以外では唯一、自発的に勉強したいと思える学問でした。だから、この大学で勉強しようかとも思い悩んだのですが、もしかしたら樹木も動物行動もどちらも勉強できる大学があるのではないかと思ってネットで検索したら、東京農工大学の地域生態システム学科が引っかかって、どちらも勉強することができると知ったのです。

より深く調べていくと、東京農工大学で教鞭を執られている方の中に日本で唯一、アメリカで『米国獣医動物行動学専門医』という資格を取られた入交眞巳(いりまじり まみ)先生という方がいらっしゃいました。

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