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横浜ゴム「アドバンスポーツ」タイヤ開発秘話 欧州で鍛えた総合性能と、その未来像に迫る

東洋経済オンライン / 2024年2月5日 11時50分

西:最新のV107ではどんな進化を狙ったのですか?

堀:V107では、V105から制動性能を向上させることを主目標に開発を行いました。低燃費性能を維持しながら、アドバンスポーツとしてふさわしいハンドリング性能に加えて制動性能を大きく高めています。商品化にこぎつけた今だから言えますが、これが本当に大変でした……。

西:どこが一番大変でしたか?

堀:ご存じのようにタイヤはすべて物理現象(例/摩擦円)にのっとっているため、どこかに限界点があります。V103、V105と後継モデルを投入するたびに従来モデルより総合性能を向上させてきましたが、今回のV107ではこれまでの開発プロセスだけでは限界点がみえていたのです。しかし、この追い詰められた状況におかれたからこそ、高い静粛性と優れたハンドリング性能、ウエット路面とドライ路面のいずれでもグリップ力が強いなど、二律背反とされる性能を実現できたのかもしれません。ものすごくやりがいがありました!

恒川さん(以下、恒):私のイメージでは、アドバンスポーツは走行性能重視のブランドとの認識が強く、開発プロセスではハンドリング性能や操縦安定性を重視してきました。一方で、横浜ゴム全体としてはウエット路面での性能も大切にしています。

西:その実現に向け、どのような開発プロセスを踏んだのですか?

恒:ドライ路面とウエット路面の二律背反を成立させるためには、まずドライ路面でのグリップ力を高めるためトレッド面におけるブロック面積を大きくして剛性アップしました。しかし、単にブロック面積を大きくしただけでは排水性能が悪くなり今度はウエット路面での性能が落ちてしまいます。そこで真価を発揮するのが我々が培ってきたさまざまな技術です。これらを有機的に組み合わせロジカルに設計することができました。

不:これまで我々はニュルブルクリンクで開発を重ね、さまざまな知見を得ることができました。また、業界のなかでも「ニュルブルクリンクで開発した」ことが知れわたることで一目おかれるようになりました。しかし、ユーザーの方々には、“ニュルブルクリンクでの開発が商品にどう生かされているのか”、これが伝わりにくいということも理解できました。よって我々のタイヤがポルシェやメルセデス・ベンツのAMGやBMWのMに純正装着してもらえれば認めていただけるのではないか、その一心でこれまで全力で企画、開発、製造をおこなってきました。越えるべきハードルは高く、大変な労力を必要としましたが、それだけに商品化されユーザーの方々からご満足いただけたとのお声をいただくたびに我々の士気は大きく高められ、次の商品化への力をいただいています。

アドバンスポーツの将来像

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