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「兵士の命優先」で解任されたウクライナ軍総司令官 侵攻から丸2年、ウクライナ大統領が思い知った現実

東洋経済オンライン / 2024年2月14日 10時0分

しかし実際は、ゼレンスキー政権にとってザルジニー氏解任は反攻作戦の立て直し、という純軍事的目的だった。声明でも大統領はこの説明に心を砕いた。

曰く「これは名前の問題でも、国内政治の問題でもない。軍のシステムやウクライナ軍の管理の問題である。ザルジニー氏との率直な意見交換の結果、緊急の変更が必要との意見で一致した」と強調した。

元々、大統領とザルジニー氏との間には2023年秋から信頼関係に亀裂が走っていた。2023年6月に始めた反攻作戦は当初の目標を実現できないまま難航した。

おまけに、2023年11月初めにイギリス『エコノミスト』誌とのインタビューで、ザルジニー氏が戦況について第1次世界大戦のような「陣地戦」に陥り、膠着状態に陥っているとの見解を表明したからだ。この見解に対し、ゼレンスキー氏は「膠着状態ではない」と否定してみせて、周囲を驚かせた。

この時期、クリミアでの黒海艦隊に対する攻撃や黒海での穀物輸出ルートの確保など、ようやく反攻が局地的に動き始めた矢先だった。東部や南部での反攻地上作戦が思うように進まない中、ゼレンスキー氏としてはこうした黒海での進展を政治的にも反攻の成果として内外に誇示したいところだった。

それなのに軍トップのザルジニー氏が大統領の立場にお構いなしに「膠着状態」と言い切ったことが不満だったようだ。2023年末には、記者会見で大統領は東部や南部での地上作戦が難航しているのはザルジニー氏と参謀本部の責任だと言い切るまでになっていた。

もちろん、筆者がこれまで再三指摘したように、反攻難渋の最大の要因はF16戦闘機などの供与をバイデン政権が渋ったことだ。だが、その裏でキーウはウクライナ軍の作戦にも問題があったとして、ザルジニー氏の総司令官としての能力に見切りを付け始めたのだ。

表に出ていないが、政府高官からは「明るくて人柄は良いが、総司令官としては無能だ」と吐き捨てる意見も出ていた。

さらに、歩兵部隊・戦車部隊・砲兵部隊・ヘリコプター部隊など異なる兵科部隊を単一の命令系統に組み込んで戦う「諸兵科連合作戦を彼はついにうまく実行できなかった」との批判も出ていた。

ウクライナ軍「戦略的防衛」からの脱却

しかし、今回の解任劇は単にザルジニー氏個人の総司令官としての能力、適性を巡る問題ではなかった。ウクライナ政府にとって、2024年の戦局全体にかかわる非常に重大な判断が背景にあったのだ。

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