「兵士の命優先」で解任されたウクライナ軍総司令官 侵攻から丸2年、ウクライナ大統領が思い知った現実
東洋経済オンライン / 2024年2月14日 10時0分
多くの戦死者を出してもゼレンスキー大統領の命令を黙々とこなそうとする姿勢は旧ソ連軍幹部を彷彿とさせる行動である。
そもそもウクライナ軍のソ連軍的体質からの脱却を目指して、西側的司令官であるザルジニー氏を総司令官に任命したのはゼレンスキー氏だ。先述したように、大統領とすり合わせもせずに「膠着」発言をしたことが象徴するように、思ったことをズケズケ発言する行動パターンも元々許容していた。
だが、ロシア軍との戦争で2年が経過する中、ロシア軍との戦争で求められる軍指導者像について、ゼレンスキー氏は非常に重い結論に達したのではないか、と考える。
つまり、戦死を承知の「捨て駒」として受刑者出身の突撃部隊を最前面に押し出して、波状的に攻撃を繰り返す非人道的なロシア軍と戦い勝つためには、ザルジニー氏的な兵士の生命優先論では対抗できないと悟ったのではないだろうか。
もちろん、シルスキー氏が総司令官として兵士の命を粗末に扱うと言い切るのは公平ではないだろう。しかし、ザルジニー氏と比べれば、戦果優先の側面が強くなる可能性は高いだろう。
こうしたゼレンスキー氏の変身を批判する向きもあるだろう。しかし、自軍の戦死傷者数が30万人以上に達したともいわれる残酷なプーチン・ロシア軍に対抗するには、やむをえない判断だったと考える。
これが3年目に入るウクライナ侵攻の現実なのだ。目を背けることなく、しっかりと直視すべきだ。
吉田 成之:新聞通信調査会理事、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長
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